老後の住まいは、多くの人にとって最大の資産である一方、大きな負担にもなり得ます。子どもが独立したり、夫婦のどちらかが亡くなったり離婚したりすると、かつて家族で暮らした家が「広すぎる家」へと変わることも少なくありません。とはいえ、売却や住み替えを考えても、長年住み慣れた家を手放す決断は容易ではないものです。71歳の元会社員男性もまた、誰も住まない部屋を抱えながら、一人で大きな家を守り続けていました。FPの小川洋平氏が“老後の家”で考えるべきポイントを詳しく解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「もう、誰も来ないのに」…家族5人で暮らした庭付き一戸建てに“ぽつん”。年金月18万円・71歳元部長、空き部屋を持て余しながらも離れられない「切実な事情」【CFPが解説】
年金を上回る住居費と生活費…「このままでいいのか」
悩みの種は、かさむ住居費と維持管理の負担でした。
佐藤さんの年金収入は月18万円ほど、現在の金融資産は約1,000万円です。住宅ローンは完済していますが、固定資産税、火災保険、光熱費、修繕費、庭木の管理費などがのしかかります。
●佐藤さんの家計例(月額)
【収入】
年金:18万円
【支出】
・食費……6万円
・水道光熱費……2万円(寒冷地のため、冬場はさらに増加)
・固定資産税・火災保険積立……2万円
・修繕費・庭木管理費積立……2万円
・通信費……1万円
・自動車維持費……2万円
・医療費……1万円
・その他(日用品、被服費、交際費・趣味・雑費等)……8万円
支出合計:約24万円(変動あり)
このように基本的に赤字家計であり、預貯金で補う生活です。さらに、頻度は高くありませんが、外壁塗装や屋根・水回りの修理など、突発的な費用も見込んでおかなくてはなりません。
「使っていないスペースが多いのに、お金だけはかかる。この家をあとどれぐらい維持できるのか。それに俺が倒れたら、この家はどうなるんだろう。小さい家への住み替えも不動産屋のチラシを見るたびに考えてはいるんですが、どうしても動けないんです」
「もう少し後で考えよう」を繰り返し、気付けば10年以上が経過。不安はあるが行動できない、そんな状態のまま、佐藤さんは使わない部屋のために貯蓄を切り崩し続けているのでした。
