長男の妻は相続できない?法定相続分という「納得しがたい結末」

ミチコさんの怒りは当然のものです。食事の介助から排泄の処理、床ずれのケアまで、自分の時間を犠牲にして義父を支えました。医療費や介護費がかさみ、自分たちの貯金を約200万円も取り崩して補填していたのです。

義父の預金は定期預金や施設・葬儀費用への備えとして手をつけにくく、日々の紙おむつ代、通院付き添いの交通費、介護用品代、家計の不足分などを長男夫婦が立て替えていました。

しかし結局、話し合いは平行線をたどり、最終的にはマユミさんの主張どおり、法定相続分に則って決着せざるを得なくなりました。

長男(夫)の相続分:実家(不動産1,500万円)

義妹の相続分:預貯金1,500万円

ミチコさん夫婦の手元には換金しにくい不動産だけが残り、介護のために取り崩した約200万円の補填もできないという、納得しがたい結末となったのです。

「うちにはたいした遺産なんてない」家庭ほど相続が“泥沼化”するワケ

相続トラブルは多額の遺産を持つ一部のお金持ちだけの話だと思われがちですが、実際はそうではありません。

裁判所の令和6(2024)年司法統計によると、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件のうち、遺産額5,000万円以下のケースが約76%を占めています。財産が少ないからこそ分け方に融通が利かず、互いに一歩も引けない泥沼の争いに発展しやすいのです。

相続の現場では、今回の事例のように「介護をした人の気持ち」と「法律で定められた相続分」が食い違うことで、家族関係が悪化してしまうケースが少なくありません。

また、法律上、配偶者の親(義父・義母)が亡くなった際、長男の妻には法的な相続権がありません。どれだけ下の世話をしようが、私財を投げ打とうが、遺産を相続できるのは血のつながった「実子」だけです。

もちろん、介護による貢献が大きい場合には特別寄与料を請求できる可能性はあるものの、当然に遺産を受け取れるわけではありません。介護の内容や無償性、特別な貢献の程度を立証する必要があります。そのためにも介護した内容について「記録」を残すことが重要です。