孤独を防ぐのは「遠くの親戚より近くの他人」

自分の居場所や役割を失うことは、幸福感を下げる要因になります。では、どうすれば孤独を感じずにいられるのでしょうか。

今回の事例でいえば、ナオトさんに「気軽に連絡できる相手」や「一緒に趣味を楽しめる仲間」がいれば、毎日の景色は少し違っていたでしょう。

いまからでもできる人間関係構築の方法としては、「あいさつの習慣」が挙げられます。「なんだ、そんなことか」と思うかもしれませんが、侮ってはいけません。あいさつをきっかけに言葉を交わすようになれば、やがて近所の飲食店の常連同士で仲良くなったり、地元のボランティアに誘われたり、「新しいつながり」が広がることがあります。

「遠くの親戚より近くの他人」といわれるように、親密な近隣住民こそ、いざというときに孤立を防ぐ防波堤になることもあるのです。

とはいえ、リタイア後にゼロから良好な人間関係を築くのは想像以上のエネルギーが必要です。現役時代コツコツ老後資金を積み立ててきたように、体力と気力があるいまから「久しぶりに学生時代の友人に連絡してみる」「参加できそうな地域の集まりを一つ調べてみる」といった「人付き合いの投資」にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

その小さな積み重ねが、「会いたい人がいる」「行きたい場所がある」「自分を待つ誰かがいる」というお金では買えない資産となって、数十年後あなたのスケジュール帳にワクワクする予定を書き込んでくれるはずです。

満足な老後を実現するために…資産を「使う」ことの重要性

さらに、十分な資産があるナオトさんのようなケースでは、「資産の使い方」にも目を向けることをおすすめします。

現役時代は「資産を増やすフェーズ」ですが、老後は計画的に「資産を使い切るフェーズ」へと移行すべきです。ナオトさんの問題は、資産を自分の人生や人間関係を豊かにするために使うことを忘れている点にあります。

たとえば、「毎月10万円の交際・経験予算」を戦略的に組み、お金をかけて地域のコミュニティサロンや趣味の教室に参加すれば、自然と同じ境遇の仲間と出会うことができます。また、遠方に住む娘さん家族を旅行に招待して費用を負担するなど、「思い出づくり」に資産を活用すれば、家族とのつながりも回復するでしょう。

人生100年時代に必要な経済的基盤をしっかり整えると同時に、こうした人間関係や経験といった「自己投資」の重要性にも気づけるかどうか。現役時代からこの両輪をうまく回していくことが、「お金さえあれば幸せ」という勘違いを手放し、満足な老後を実現させる秘訣といえるのではないでしょうか。

山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー

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