きょうだいがいる場合、相続が発生すると財産を分け合う必要があります。親が資産価値の高い不動産を所有していた場合、現金より「得」に見えることもありますが、相続後に“思わぬコスト”に悩まされ、苦しい状況に陥る可能性も……。本記事では、「7,000万円のタワーマンション」を相続した姉と、「4,000万円の現金」を相続した妹の事例から、弁護士の山村暢彦氏が「不動産を相続する際の注意点」について解説します。
嘘でしょ…〈7,000万円のタワマン〉を相続して「家賃ゼロ!」と浮かれた35歳姉の大誤算。〈4,000万円の現金〉を継いだ31歳妹は苦笑い【弁護士が解説】
余裕の妹、苦しむ姉…ミサトさんは身の丈に合わない遺産を手放すことに
一方で、現金4,000万円を相続した妹のユイさんは、投資信託などで堅実に運用し、着々と資産を増やしていました。休日は旅行に出かけるなど余裕のあるユイさんに対し、ミサトさんは生活を切り詰めるようになっていました。
「タワマンなんて、私の給料で住むところじゃなかった。住んでいるだけでお金が飛んでいくなんて……」
久しぶりに姉妹で食事をした際、ミサトさんはたまらずユイさんに泣きつきました。あんなに勝ち誇っていたミサトさんの弱音に苦笑いしつつ、ユイさんは冷静にアドバイスをしました。
「維持費がキツいなら売っちゃえば? 最近マンションの値段が上がってるってニュースで見たよ」
タワマンというステータスに執着していたミサトさんでしたが、背に腹は代えられず、不動産会社に査定を頼むことにしました。すると、2年前に7,000万円だった部屋が、好立地だったこともあり8,000万円にまで値上がりしていたのです。
「このまま維持費のために働くなんて馬鹿らしい。売ったお金で手頃な中古マンションを買って、残りはユイみたいに運用に回すよ」
ミサトさんはようやく見栄を捨て、身の丈に合った生活を選ぶ決意を固めました。
【弁護士の見解】不動産相続で見落としがちな「維持費」の負担
本件でまず押さえるべきなのは、相続で不動産を取得した場合でも、「評価額の高い財産をもらったから得」と単純にはいえないという点です。
マンションを所有すれば、固定資産税・都市計画税、管理費、修繕積立金、火災保険料など、保有しているだけで継続的な支出が発生します。住宅ローンがなくても、本人の収入や生活水準に比べて維持費が重ければ、相続した不動産が生活を圧迫することがあります。
この点は、不動産投資でも同じです。物件価格や表面利回りだけを見て購入し、税金、修繕費、管理費、空室リスクなどの維持コストを見落として失敗する例は少なくありません。不動産は「買う」「もらう」だけでなく、「持ち続ける」ための費用まで含めて判断する必要があります。
また、本件では8,000万円で売却できるため、一見すると結果的に成功したようにも見えます。しかし、売却時には仲介手数料、譲渡所得税などのコストも考慮しなければなりません。
特に譲渡所得税は、父親がそのマンションをいくらで購入していたか、取得費を証明できるかによって大きく変わります。取得費が低く評価されれば、売却益が大きくなり、その分税負担も重くなります。
そのため、姉が8,000万円で売却できたとしても、手元に残る金額は額面ほど大きくない可能性があります。妹が相続した現金4,000万円と比較しても、維持費や売却費用、税金を差し引けば、最終的な手取りに大きな差が出ない場合もあります。
相続では、財産の評価額だけでなく、維持費、流動性、売却可能性、税金、本人の生活設計まで含めて判断することが重要です。不動産は魅力的な資産である一方、保有コストと出口戦略を見落とすと、思わぬ負担になることもあるのです。
山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士
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