退職金で住宅ローン一括返済のつもりが…「再雇用で減収」の落とし穴

定年後、再雇用で働き始めたAさん(60歳)は、住宅ローンの返済を続けています。40歳のとき、70歳まで返済が続く住宅ローンを組みました。定年まで働き続ければ、退職一時金が2000万円ほど出ることがわかっていたため、「いざとなれば退職金で一括返済」のつもりで、漠然と考えたそうです。

ところが、実際に再雇用で働き始めると、収入は現役時代の7割ほどに減りました。高年齢継続雇用給付金も含めて、手取りで26万5000円ほどです。家計は一気に赤字となり、退職金から毎月7万円超を取り崩す生活になりました。それほどムダ遣いしている意識はなく、解決策が見当たらなかったため、私たちのもとへ相談に来ました。

住宅ローン完済の平均年齢は?

国土交通省の『住宅市場動向調査報告書』(2024年度)の借り入れ年齢の平均と返済期間の平均から試算すると、住宅ローンを完済する平均的な年齢は、分譲戸建て住宅で69.7歳、分譲マンションは72.3歳です。多くの人が、定年後も住宅ローンを返済し続けていることがわかります。

しかし、収入を見ると、50代半ばの役職定年で減収、定年後の再雇用でさらに減収と、定年前から減少傾向が続く人がほとんどです。再雇用では、現役時代より5〜8割ほど、収入の減る人が多いそうです。

ただし、住宅ローンの返済のために老後資金を取り崩す必要が生じたとしても、焦って取り崩してはいけません。ローンの残債と金利などを天秤にかけて、ローンの返済計画をどのように見直すべきか、慎重に再検討する必要があります。

「一括返済でスッキリ」には要注意…何より優先すべきは“老後資金の確保”

Aさんの家計表を見ると、削減できる余地はあるものの、極端に浪費している印象はありません。支出の約4割を住居費(=住宅ローン)が占めるため、その負担が大きく影響しています。

住宅ローンがなくなれば家計は黒字化しますが、果たして一括返済は正しい選択といえるのでしょうか。Aさんの住宅ローンの中身は、残りの返済期間が約10年で、残債が約1700万円。金利は1.3%で、返済終了まで固定です。仮に残債を一括返済した場合、1700万円の出費となります。

退職一時金が出たばかりで貯蓄は2200万円ほどあるため、一括返済しても500万円は残ります。ですが、定年後の蓄えとして500万円はちょっと心許ないかもしれません。

繰り返しますが、老後は突然の病気やケガといったリスクが高まり、介護や住宅のリフォーム代などが必要となる時期もきます。こうした不測の事態に備えるためにも、まとまった資金を一気に手放すのは考えものです。

返済を優先するあまり、不安が増大したり、生活が破綻したりしては元も子もありません。老後の蓄えが十分であれば、一括返済や繰り上げ返済を選択してもよいでしょう。

ただし、資産運用でリターンが3%、5%と出せているなら、住宅ローンの金利と比較して、一括返済よりも運用を続けるほうが有利な場合があります。詳しくは第6章で解説しますが、新NISAを活用しながら運用すれば、十分に可能性はあります。