キタノさんが満を持して勧めてきた“あるもの”

そして翌日、空いていた応接室に彼を招き、扱っている金融商品の話を聞くことに。するとキタノさんは、「インド株」を勧めてきました。

キタノ「2024年5月に、アメリカ大手格付け会社のグローバル・レーティングスはインドのソブリン債に対する格付け見通しを『安定的』から『ポジティブ』に引き上げたんです。今後、GDPは6%から8%の成長を期待されていますし、ユニバースと呼ばれる機関投資家の投資制限対象からも外れてくる見通しです」

インド株の期待値が高まっているのは事実です。インドはBRICSの構成国からグローバルサウスの代表国へと存在感を増しており、また2036年の夏季五輪の有力な開催国候補となっています。

(年齢のわりにはよく勉強している。暗記しているだけの可能性もあるが、俺自身が突っ込んだ質問をできるだけの知識を持ち合わせていない……)

わからないなら、信じることも判断のひとつだと、薬丸さんは、資産のうち500万円を投じ、インド株の投資信託を購入することにしました。

悔やんでいます…“母校愛”が招いた悲劇

それからしばらくは、堅調な推移をみせていたインド株。しかし2025年、その流れに変化が生じます。

相場の高いボラティリティの割を食い、薬丸さんが投資している投信のパフォーマンスが伸び悩みはじめたのです。そして2026年現在、評価額はマイナスです。

「言っていたことと違うじゃないか……」

頭を抱える薬丸さん。しかし、当のキタノさんはすでに会社を辞め、外資系生命保険会社に転職したとのことでした。悔しさが募っても、もう連絡を取ることは難しいでしょう。

理解していない投資はギャンブルと一緒

投資は自己責任であることは、薬丸さん自身もよくわかっています。キタノさんに責任を問うことはできませんが、複雑な思いが残るのも事実です。

「今回私は、キタノくんという人間にベットして負けました。野球部の後輩だからと手放しで信じた結果これですから……悔やんでいます」

今回紹介した薬丸さんのように、若い営業マンの未熟さを好意的に受け止める人もいるかもしれません。ただし、決して小さくないお金を預けるのですから、人だけで判断するのはやめましょう。自分が投資する資産について、リスクを含めてきちんと理解したうえで、慎重に見極めることが大切です。

工藤 崇
FP事務所MYS代表
FP(ファイナンシャル・プランナー)