エリート会社員が“しつこい営業マン”に足を止めたワケ

今回紹介する薬丸さん(仮名・60歳)は、東京都にある有名私立大学付属高校出身。系列大を卒業したあとはかれこれ40年、MRとして第一線で活躍してきた人物で、ピーク時の年収は約2,000万円でした。

傍から見れば「順風満帆な人生」を歩んできたように見えますが、薬丸さんは赤坂のマンションで1人、頭を抱えた苦い経験があります――。

薬丸さんの勤務先に1人の青年が訪ねてきたのは、2024年9月のことです。

アポイントもなしに会社の受付に立ち寄り、飛び込みで営業活動を行う会社は少なくありません。何度断っても諦めない姿勢は時代錯誤ともいえるほどしつこいものでした。しかし、一度足を止めて話を聞くと、今度は長い巻物のような礼状が送られてきます。

その日、薬丸さんは取引先に向かうためオフィスを出たところで、青年に声をかけられました。

「私、A社のキタノと申します! 数分だけお時間よろしいですか? 薬丸さまの定年後の資産についてお話したいのですが」

見るからに若そうな青年が、私になんの話をするというのだろう……。そう思った薬丸さんは「結構です」とだけ返して車に乗り込みましたが、キタノと名乗る人物は次の日も、その次の日も同じ時間に現れ、声をかけてきます。はじめのうちは目を合わせることもなく車に乗り込んでいましたが、5日目、キタノさんの“あるひと言”に、思わず足を止めました。

「薬丸さん! 僕、薬丸さんと同じ高校の野球部出身なんです!」

“野球部の後輩”の巧みな勧誘

「X高校?」

思わず聞き返すと、キタノさんは水を得たように声を弾ませました。

「はい! 〇〇年卒業の▲▲期生です!」

薬丸さんは母校への愛が強く、社会人になってからも甲子園の応援を欠かしません。現地に行けない年も必ずテレビの前に張りつき、母校の試合を見守ってきたそうです。

「少しでいいなら、話を聞こうじゃないか」

キタノさんに対する警戒感が薄れた薬丸さんは、その場で翌日話を聞く約束を交わします。