お年玉は、正月に大人が子どもへ成長を祝う気持ちを形にして伝える日本ならではの習慣です。本来、渡すほうも受け取るほうも幸せなイベントのはずですが、家庭ごとにお年玉の金額の基準や考え方が異なるため、思わぬ誤解やトラブルが生じることもあります。「お年玉なんてあげなきゃよかった」と後悔を口にする69歳夫婦の事例をもとに、お年玉をめぐる家族間のトラブル事例をみていきましょう。
お年玉なんてあげなきゃよかった…〈年金月24万円〉〈貯金2,000万円〉69歳夫婦がポツリ。理由は、義理の娘の「何気ない一言」
義理の娘の「何気ない一言」で生まれた“わだかまり”
そして迎えた新年。
明弘さん夫婦は用意していたお年玉を、かわいいポチ袋に包んで孫へ手渡しました。
「え~ありがとうございます! わざわざいいのに」
望さんも恵理さんも丁寧に頭を下げて感謝してくれ、明弘さんは「やっぱりあげてよかった。こういうものは金額じゃないよな」と、ほっと胸をなで下ろしました。
ところが……。
その日の夜、明弘さんが入浴を終えてリビングへ向かう途中、ふと息子の部屋から話し声が聞こえてきました。
恵理さん「1,000円はちょっとビックリだったね(笑) うちの実家は1万円だったから、同じくらいかと思ってた」
望さん「ほんとごめん。お金がないわけじゃないと思うんだけど……。初孫に1,000円はさすがに少ないよな。明日ちゃんと言っておくから」
耳に入ってきた言葉に、思わず足が止まります。
相場を調べ、将来の関係性まで考慮して決めたお年玉の金額。「常識がないのはいったいどちらなのか」と、やりきれない思いがこみ上げます。
「こんなふうに思われるくらいなら、お年玉なんてあげなきゃよかった……」
長く楽しみにしていた初孫との時間でしたが、明弘さん夫婦の心には思いがけず、重たいわだかまりが残ってしまいました。
「お年玉トラブル」を防ぐために
明弘さん夫婦が相場を調べ、将来の関係性を踏まえてお年玉の金額を決めた判断は、決して間違いではありません。
しかし、お年玉は家庭ごとの価値観が反映されやすく、金額の違いによって思わぬ行き違いが生じることがあります。
お年玉をめぐるトラブルを防ぐ工夫のひとつとしては、「少額のお年玉にプレゼントを添える」方法が考えられます。今回のケースであれば、現金1,000円を包むほかに、おもちゃや絵本、ベビー用品などを贈るのです。
そのほか、相手側の親と事前に話して、あらかじめ金額を合わせておくという方法もあります。
お年玉は本来、気持ちを形にしたものです。金額にばかり意識が向いてしまうと、せっかくの善意が誤解されることもあります。渡し方を工夫するなど自分たちなりの基準を持つことが、長い家族関係を穏やかに保つためのひとつの方法といえるでしょう。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP