厚生労働省の統計によると、離婚そのものは2002年をピークに減少傾向にあるものの、そのうち婚姻期間が20年以上の「熟年離婚」は統計のある1947年以降で過去最高を更新し続けているそうです。熟年離婚が増えている背景はいったいなんなのか、朝日新聞取材班による著書『ルポ 熟年離婚』(朝日新聞出版)より、熟年離婚の現実とその背景を、事例を交えて紹介します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
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婚姻20年以上の離婚が急増…“熟年夫婦の破綻”が止まらないワケ
離婚件数と熟年離婚の比率 出典:人口動態統計
厚生労働省の統計によると、2023年の離婚件数は18万3,814組で、前年より4,715組増加した。離婚そのものは、02年の28万9,836組をピークに減少傾向にあるが、そのうち婚姻期間が20年以上の熟年離婚は3万9,810件と前年より増え、離婚率も23.5%と、統計のある1947年以降で過去最高を更新し続けている。
NPO法人・日本家族問題相談連盟理事長で公認心理士、離婚カウンセラーの岡野あつこさんは、「熟年夫婦の離婚相談は女性からが7~8割。要因で多いのは、夫のモラハラなどです」と語る。子育てが一段落したことも離婚を決断する要因となり、退職金や年金などの財産分与を考える場合、「夫の定年の2〜3年前から妻は準備に動きだす」という。
人生100年という長寿社会の影響もある。1950年ごろの男性の平均寿命は約60歳。定年後、夫はそれほど長く生きる存在ではなかったが、今や男性の平均寿命は81歳。子どもが独立した定年後、夫婦で過ごす時間が長くなった。
これまで日本の熟年夫婦のモデルは、夫は外で働いて生活費を稼ぎ、妻は子育てなど家庭を守るという役割分担をし、夫婦が一緒に行動し、密接につながることは稀で、愛情うんぬんより、経済的な関係という側面が強かったといえる
女性のエンパワーメント(自己決定能力)の高まりにより、「配偶者との価値観の違いや性格の不一致などを我慢せず、リセットしようとするケースが目立つ」とも指摘する。
妻側が離婚を切り出すのは、共稼ぎや実家からの遺産相続など経済的な自立のメドが立っている場合が多いという。
朝日新聞取材班