令和5年度の司法統計によると、家庭裁判所へ持ち込まれた遺産分割争いの件数は13,872件でした。特にきょうだい間でのトラブルが多く、親が生きているときは仲の良かったきょうだいが遺産相続でトラブルになり「絶縁」してしまった、というケースも……。遺産を巡って実の姉と大揉めした男性の事例をみていきましょう。FPの山﨑裕佳子氏が解説します。
親父の遺産がそんなに少ないわけないだろ!…年収700万円の49歳サラリーマン〈遺産分割協議〉でブチ切れ→実家暮らしの55歳姉から告げられた「まさかの事実」に涙【FPが解説】
“一般家庭”ほど相続で揉めるワケ
相続問題と聞くと「うちはお金持ちじゃないから関係ない」と考える人は多いです。
しかし、相続トラブルはお金持ちだけに起こる問題ではありません。司法統計の遺産分割事件調停成立件数※を遺産の価額別に見ると、総数7,234件のうち、「遺産が5,000万円以下」のケースが全体の77%を占めているのです(1,000万円以下:2,448件、5,000万円以下:3,166件)。
一方で調停件数の推移をみると、遺産が多いケースほど調停件数が減少していることがわかります。相続トラブルは「遺産がそれほど多くない家庭」でこそ起きているのです。
相続トラブルは一般的に、以下のような家庭で起こりやすいといわれています。
・相続人同士の仲が悪い
・相続財産の多くが不動産である
・特定の介護負担が大きかった
・生前贈与がある
・異母、異父兄弟姉妹がいる
など
遺産相続は、相続人同士の合意があれば任意の割合で分割できますが、相続人同士が不仲だと円滑に話し合いが進みません。
特に不動産は分割が難しいため、トラブルになりやすい遺産です。さらに、2019年から看護や介護を特別に担った人に対し「特別寄与料」を請求する権利が与えられたことから、相続人間に溝ができてしまうことも考えられます。
また、滋さんのように特定の相続人だけに生前贈与を行っていた場合も、相続人同士が対立してしまう要因となるでしょう。
親の死後、相続の件で子どもたちが対立してしまっては、故人も浮かばれません。円満に相続が実行できるよう、
・家族同士で情報を共有し、風通しをよくしておく
・相続財産の棚卸をしておく
・不動産を誰が相続するのか決めておく
・看護や介護の寄与分を考慮する
・遺言書を作成しておく
など、あらかじめ対策をとっておくことをおすすめします。
和夫さんの「その後」…
母と姉から本音を聞き、和夫さんはこれまでの自身の行動を反省。結局、遺産のうち1,000万円の定期預金は真由美さんと和夫さんで半分ずつ相続することで合意しました。
また、自宅は母の紀子さんが相続することとし、この先も真由美さんと一緒に住み続けることに。紀子さんは、自分の年金と父の遺族厚生年金があれば、生活に困ることはないと判断しました。
そして、紀子さんは「こんなトラブルは二度と起きてほしくない」と、今回のことを教訓に、自分亡きあとの娘、息子のために遺言書を作成することにしたそうです。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表