令和5年度の司法統計によると、家庭裁判所へ持ち込まれた遺産分割争いの件数は13,872件でした。特にきょうだい間でのトラブルが多く、親が生きているときは仲の良かったきょうだいが遺産相続でトラブルになり「絶縁」してしまった、というケースも……。遺産を巡って実の姉と大揉めした男性の事例をみていきましょう。FPの山﨑裕佳子氏が解説します。
親父の遺産がそんなに少ないわけないだろ!…年収700万円の49歳サラリーマン〈遺産分割協議〉でブチ切れ→実家暮らしの55歳姉から告げられた「まさかの事実」に涙【FPが解説】
え、たったこれだけ?…「父の遺産額」を知った和夫さんは激怒
四十九日を終えたあと「遺産について話がある」と言われた和夫さんが実家を訪れると、母・紀子さんがこう切り出しました。
紀子「父さんの遺産は、預金1,000万円とこの家だけだから」
それを聞いた和夫さんは「え? そんなわけないだろ」と驚きます。
というのも、昔から両親は派手なことが嫌いで、生活も堅実そのもの。年金だけでも生活は余裕なはずです。
「退職金もそれなりの額があっただろうし、親父は相当貯めこんでいるはずだ」と考えていた和夫さんは、まさかの事実にうろたえます。
年収700万円とはいえ、和夫さん自身も2人の大学生を抱えている父親であり、生活に余裕はありません。そのため、「遺産が入れば少しは生活が楽になるだろう」と内心期待していたのです。
和夫「親父の遺産がそんなに少ないわけないだろ! なにに使ったんだ?」
紀子「お父さんの介護に思った以上にお金がかかってしまって……」
詳しく話を聞くと、滋さんが少しでも長く自宅で暮らせるよう、廊下と部屋の段差をなくしたり、トイレや風呂を広くしたりと、家中をリフォームしたといいます。
なるほど、改めて見渡すと家はきれいになっており、バリアフリーになっていました。
さらに話を聞いていくと、父は4年のあいだ姉・真由美さんに毎年100万円の生前贈与を行っていたといいます。
和夫「はぁ!? なんだよそれ。聞いてないぞ!」
真由美さんは結婚しておらず、長いあいだ実家で両親とともに暮らしています。知らないあいだに姉に“特別扱い”をしていたのかと和夫さんが腹を立てると、紀子さんはそれをなだめるように言いました。
紀子「真由美はお父さんの世話を本当に頑張ってくれたの。お父さん、身体が大きいでしょ。最初は私が1人でお父さんの世話をしていたんだけど、体力的にきつくなってきてね。
真由美は日中、外で仕事をしているのに、うちに帰ってきてからもお父さんのお風呂を手伝ってくれて、夜も隣に寝てトイレの付き添いまでしていたのよ。2週間に1度の通院も、真由美がいてくれたおかげでなんとかなった。真由美がいなかったらどうなっていたか……」
和夫「……言ってくれれば、俺だって」
和夫さんが不満を口にしたところ、それまで黙って聞いていた真由美さんが立ち上がって言いました。
真由美「あんた、いい加減にしなさいよ! 和夫に何度も相談しようと思ったけど、聞く耳を持たなかったじゃない。すべて和夫が父さんや母さんをないがしろにしてきた結果なのよ」
真由美さんの真っ当な言い分に、和夫さんはただうなだれるしかありませんでした。