え、たったこれだけ?…「父の遺産額」を知った和夫さんは激怒

四十九日を終えたあと「遺産について話がある」と言われた和夫さんが実家を訪れると、母・紀子さんがこう切り出しました。

紀子「父さんの遺産は、預金1,000万円とこの家だけだから」

それを聞いた和夫さんは「え? そんなわけないだろ」と驚きます。

というのも、昔から両親は派手なことが嫌いで、生活も堅実そのもの。年金だけでも生活は余裕なはずです。

「退職金もそれなりの額があっただろうし、親父は相当貯めこんでいるはずだ」と考えていた和夫さんは、まさかの事実にうろたえます。

年収700万円とはいえ、和夫さん自身も2人の大学生を抱えている父親であり、生活に余裕はありません。そのため、「遺産が入れば少しは生活が楽になるだろう」と内心期待していたのです。

和夫「親父の遺産がそんなに少ないわけないだろ! なにに使ったんだ?」

紀子「お父さんの介護に思った以上にお金がかかってしまって……」

詳しく話を聞くと、滋さんが少しでも長く自宅で暮らせるよう、廊下と部屋の段差をなくしたり、トイレや風呂を広くしたりと、家中をリフォームしたといいます。

なるほど、改めて見渡すと家はきれいになっており、バリアフリーになっていました。

さらに話を聞いていくと、父は4年のあいだ姉・真由美さんに毎年100万円の生前贈与を行っていたといいます。

和夫「はぁ!? なんだよそれ。聞いてないぞ!」

真由美さんは結婚しておらず、長いあいだ実家で両親とともに暮らしています。知らないあいだに姉に“特別扱い”をしていたのかと和夫さんが腹を立てると、紀子さんはそれをなだめるように言いました。

紀子「真由美はお父さんの世話を本当に頑張ってくれたの。お父さん、身体が大きいでしょ。最初は私が1人でお父さんの世話をしていたんだけど、体力的にきつくなってきてね。

真由美は日中、外で仕事をしているのに、うちに帰ってきてからもお父さんのお風呂を手伝ってくれて、夜も隣に寝てトイレの付き添いまでしていたのよ。2週間に1度の通院も、真由美がいてくれたおかげでなんとかなった。真由美がいなかったらどうなっていたか……」

和夫「……言ってくれれば、俺だって」

和夫さんが不満を口にしたところ、それまで黙って聞いていた真由美さんが立ち上がって言いました。

真由美「あんた、いい加減にしなさいよ! 和夫に何度も相談しようと思ったけど、聞く耳を持たなかったじゃない。すべて和夫が父さんや母さんをないがしろにしてきた結果なのよ」

真由美さんの真っ当な言い分に、和夫さんはただうなだれるしかありませんでした。