複数のSNSアカウントを持っているのは珍しいことではありませんが、「自分に万が一のことがあったときに自分のSNS投稿はどうなるのだろうか?」と疑問に思っている人も多いのでは?そこで本記事では、弁護士の菊間千乃氏による著書『おひとりさま・おふたりさまの相続・終活相談』(新日本法規出版株式会社)から一部抜粋して、SNSアカウントの削除等を含む「死後の事務処理」の準備方法について、具体例とともに解説します。
おひとりさまが死後に、知り合いに死んだことを伝えるためにはどうしたらいいの?
Q. 現在1人で生活をしています。近所のサークルや学生時代の仲間などとの交友関係は続いています。私が死んだ後には、私の死亡をきちんとその方々に伝えたいと考えています。
ただ、夫は既に亡くなっており、子もいませんので、どのようにして知り合いに死亡を知らせたらよいのでしょうか?
A. 友人への死亡の連絡・通知のみが目的である場合、通知に加えて他の事務も委任する必要がある場合、遺言及び遺言執行者の選任が必要・適切な場合など、事務の内容を整理して適切な方法を選択する必要があります。
◆死後事務委任契約
自分が亡くなった後には、病院への支払、死亡届、火葬許可取得、火葬、葬儀、公共料金の支払等、様々な事務手続が必要になります。同居の親族がいる場合は、自分が心配しなくても、これらの手続は残された親族が行ってくれることでしょう。
しかし、おひとりさまは、死後の事務を処理する方が当然には存在しないという問題があります。
そこで、これらの事務処理を行うために、依頼者が第三者と死後事務委任契約を締結して、依頼者の死後にあらかじめ契約で決めた事務を行ってもらうということが考えられます。
委任内容としては、①医療費の支払に関する事務、②家賃・地代・管理費等の支払と敷金・保証金等の清算に関する事務、③老人ホーム等の施設利用料の支払と入居一時金等の受領に関する事務、④通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務、⑤永代供養に関する事務、⑥相続財産清算人の選任申立手続に関する事務、⑦賃借建物明渡しに関する事務、⑧行政官庁等への諸届け事務、⑨あらかじめ指定した知人への死亡報告の事務、⑩ペットの施設入所に関する事務等が考えられます。
友人にこれらの事務を頼む際には、死後事務委任契約書を作成し、公正証書にしておくとより安心ではないでしょうか。
◆死後事務委任契約の注意点
死後事務委任契約が、委任者の死後も終了しない点については、判例で認められているものの、相続人間の財産の帰属を決定したり、その内容を実現・執行するような事務の場合には、遺言執行者を別途選任したほうがよいと思います。
遺言の対象になるような事項を死後事務委任契約で規定しても、遺言の一種として法律上要求される要式を欠いているとして無効とされる部分が出てくる可能性や、相続人と死後事務委任契約の受任者との間で事務の内容や方法をめぐり紛争等になることも考えられます。
死後事務委任契約を締結する際は、委任する事務の内容や受任者を誰にするのかについて、慎重に考える必要があります。
菊間 千乃
弁護士法人松尾綜合法律事務所
代表社員弁護士公認不正検査士