2020年6月1日にパワハラ防止法が施行されるなど、ハラスメントをなくそうとする取り組みが進む日本。しかし、精神障害の労災認定件数は年間800件を超え、5年連続で過去最高を更新しつつあり「職場いじめ」は増加、深刻化が進んでいます。実例を通して、近年の「職場いじめ」の特徴をみていきましょう。ハラスメント対策専門家である坂倉昇平氏の著書『大人のいじめ』(講談社)より紹介します。
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労災認定された職場いじめの「4割」が同僚によるもの
さらに決定的なことに、労災認定された職場いじめの最新の件数においても、同僚によるいじめ被害の深刻さが裏付けられている。
2020年5月末から、厚労省の精神障害の労災認定の基準となる出来事の項目において、従来の「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が、「上司等」による「パワーハラスメント」と、「同僚等」によるものに二分された。加害者が上司であったり、豊富な知識や経験をもっていたり、集団であったりと、被害者に対して「優越的な関係」にあると判断された場合に「上司等」によるものとして前者に分類され、そうでない同僚による行為は後者になる。
2020年5月末から翌年3月末までの、「上司等」による「パワーハラスメント」として労災が認定された事例は99件だった。一方、筆者が厚労省労働基準局補償課に直接確認したところ、同期間に「同僚等」によるものと分類されたのは62件であるという(図表2)。
つまり、被害者に精神障害を発症させ、労災が認定されるほどひどい職場いじめ161件のうち、少なくとも39%、約4割が同僚によるものということだ。それどころか、「パワハラ」6割の中に、「優越的な関係」にある同僚による行為も含まれている可能性がある。
このように、同僚がかなりの件数でいじめの加害者になっていることが、近年の職場いじめの大きな特徴だ。
坂倉昇平
ハラスメント対策専門家