2020年6月1日にパワハラ防止法が施行されるなど、ハラスメントをなくそうとする取り組みが進む日本。しかし、精神障害の労災認定件数は年間800件を超え、5年連続で過去最高を更新しつつあり「職場いじめ」は増加、深刻化が進んでいます。実例を通して、近年の「職場いじめ」の特徴をみていきましょう。ハラスメント対策専門家である坂倉昇平氏の著書『大人のいじめ』(講談社)より紹介します。
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職場いじめの約半数が「同僚」による行為
「職場いじめ」と聞いて、「経営者や上司によるパワハラ」を想像する人にとっては、こうした同僚によるいじめ行為は例外的なものと感じるかもしれない。しかし、統計を見ても、同僚による職場いじめは存在感を増している。
2021年の厚労省による「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、「パワハラ」に該当すると判断した事案があった企業1990社のうち、ハラスメントの行為者と被害者の関係性について、「役員」から部下に対する事案があったと回答した企業が11.1%、「上司(役員以外)」から部下に対する事案があったとする企業が76.5%だった。その一方で、「部下」から上司に対する事案が7.6%、「同僚同士」の事案は36.9%あった。「同僚同士」と「部下」からを合わせると44.5%になり、「役員」からの「パワハラ」よりも、はるかに多い。
行為者の区分がより詳細なのが、連合による「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」だ。この調査では、ハラスメント被害を加害者別に分類している。なお、同一の事件でも、複数の分類(「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」「セクシュアル・ハラスメント」「その他ハラスメントなど」)にまたがるものは、重複して集計されている。
この調査によると、加害者は「上司」(経営者も含まれている)が535件、「先輩」262件、「同僚」188件、「後輩」47件、「部下」21件となっている(図表1)。
先輩・同僚・後輩・部下を「広義の同僚」(518件になる)とすると、職場のハラスメントの件数(1,151件)のうち、加害者の割合は、上司が46.5%、広義の同僚が45.0%になる。同僚からの職場いじめが、上司によるものと拮抗し、ほぼ半数を占めるのだ。