「他の人に見せられない顔や情けなさを出せる唯一の存在」道長にとってのまひろという存在

――まひろの文学的才能やまひろ自身に心を惹かれながらも、一条天皇の目を彰子に向けさせる手段の一つとして『源氏物語』を使っていくことにもなりますが、二方向の気持ちの塩梅についてはどんなことを意識して演じていらっしゃいますか?

柄本:まひろに『源氏物語』の執筆を頼むのは確かに政治的な意味合いを持つものではあるのですが、自分の家族の幸せが第一というか、政治的なベクトルではない方向でお願いしにいったなと思っています。やっぱり、他の人に見せられない顔や情けなさを出せるのが唯一まひろだと思っているのですが、本当にすがるような思いで「何とかしてくれないか」ということを言えるのもまひろしかいないし、弱いところをしっかり出せる。だから、今から振り返ると非常にパパをしています。そこから政治につながっていっているというか……。めっちゃパパをしてやろうと思っています(笑)。

(C)NHK
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――まひろと道長はやはりソウルメイトだと思うのですが、柄本さんはどんな思いで演じてこられましたか?

柄本:最初の頃から変わっていないと言えば変わっていないのですが、やっぱり本気を出せる人っていうのかな。何にしても、愛し合うということにしても、憎み合うということにしても、弱みを見せられるという部分にしても、そういうことが本当にできる、というか「そうなっちゃう」みたいな……。だから良くも悪くも、ものすごくいいがみ合ったり、怒りあったり、極端な話、本気で決別できるような……。中途半端というか間がないっていう印象で、それを意識しながら演じています。

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『光る君へ』

『光る君へ』は、平安時代中期の貴族社会を舞台に、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書き上げた紫式部(まひろ)が主人公。のちの紫式部であるまひろが、藤原道長への思い、そして秘めた情熱とたぐいまれな想像力で「光源氏=光る君」のストーリーを紡いでゆく姿を描く。脚本を手掛けるのは、『セカンドバージン』や『知らなくていいコト』『恋する母たち』などで知られる大石静さんで、今回が2度目の大河ドラマ執筆となる。

THE GOLD 60編集部