最高権力者に上り詰めても「三郎の部分は変わらない」

――いよいよまひろが『源氏物語』を書き始めますが、当初感じていた道長像と物語が佳境を迎える中での感じ方の変化などがございましたら教えてください。

柄本佑さん(以下、柄本):当初感じていた道長像というのは、多くの人が思い浮かべるようなヒール要素のある道長というよりは、政治に積極的に関わっていく兄2人に対して、政治にはそこまで前のめりではない。のんびり屋の三男坊の三郎という感じの人間味あふれる人物だと捉えていました。

そんな三郎からスタートして、何の因果か政治のトップに立つことになっていくのですが、最終章に入る手前くらいのところを撮影している今は、最初に感じていた三郎としての人間性がより大事だなとより感じています。というのは、政治のトップとしていろいろ意見したり、中にははかりごともあるのですが、三郎の部分というか、基本的な人間性は変わらないと思うし、最近特にその部分を意識しています。

(C)NHK
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「これまでの道長像とは違う道長を」大石静さんから言われた言葉

――「道長はもっと政治的にギラギラしていたのでは?」という声も時々見かけますが、そのあたりについてはいかがでしょうか?

柄本:最初の打ち合わせの際に「これまでの道長像とは違う新しい道長像を描きたいと思っている」ということを言われました。大石さんが書かれる台本に非常に強度を感じるし、説得力も感じています。なので、100パーセント信頼してその台本に書かれている道長を演ろうと思って出発しているので、そこには何の疑いもないです。

もし、この作品を通して道長が「政治的な野心が強くない」「控えめである」という印象を与えているのだとしたら、道長は非常に地に足のついたところから出発しているからなのかなと。

例えば、第27回で道長は娘・彰子(見上愛さん)の入内に際し、屏風歌(びょうぶうた)を作ることを思い付き、公卿たちに依頼する場面が描かれますが、当時の感覚では、だいぶえげつないことをしているらしいです。でも、道長はとにかく彰子の幸せを願っていて、入内を決めたからにはとにかく娘に幸せになってほしいという気持ちの表れなんですね。でも周りから見たら結構エグいことをしている。でも、道長自身はとにかく家族の幸せとまひろとの約束を果たすために邁進しているんですよね。

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