「『枕草子』に定子さまとの日々を書き続けること」ききょうの使命

――定子の兄・伊周が、『枕草子』を宮中に広めようと提案したときにききょうは嫌がります。でも、その後、宮中でお広めくださいという心境の変化がありましたね。

ウイカ:最初は大手の出版社から「これも売っちゃおうよ」と言われて「いやー、そういう感じで書いたんじゃないんだけど……」という同人誌を書く作家のような気持ちとSNSで書いていた方がいて、まさにそうんなんですよね。

ききょうは「本当に伊周って毎回マジでいらんことするんだよなー!」という心の叫びを感じていて「ほら、定子さまも嫌がってるじゃん。2人だけの宝物にしようと思ったのにー」みたいな部分はあったのですが、中関白家が没落していく様子を身近で目の当たりにして、定子さまという存在が消えてしまったら、彼女があれだけ耐えた人生が何の意味も持たないというか、何もなかったことみたいになるのがききょうにとっては一番解せなかったんだと思います。

(C)NHK
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「皇子を産め、皇子を産め」と言われながらまさに文字通り命をかけて守ろうとした家を何とかして、残された子供たちが力を持てなくなることを避けるために定子さまから託された最後の使命、それを誰が果たすのか? となったときに、「もうこの兄弟には任せられないな。こいつらダメだな」とききょうはどこかで思っているんですよね。『枕草子』が最後の頼みの綱というか、定子と一条天皇をつなぐ鎖になればと思ったんだろうなと。

ききょうは定子さまが亡くなった後も『枕草子』を書き続けますが、おそらくそのあたりからききょうの役割が変わってくる気がします。いかに定子がすごかったのかを書いて書いて残すというのは、ききょうの中で使命が変わったのだろうなと。それを広めることが自分にできる最後の仕事だという使命、まさに命を使って果たすことだと思ったんだと思います。いやー、かっこいいですよね。それが1000年残っているんですから。「清少納言、かっこいいよ!」と思っています。

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『光る君へ』

『光る君へ』は、平安時代中期の貴族社会を舞台に、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書き上げた紫式部(まひろ)が主人公。のちの紫式部であるまひろが、藤原道長への思い、そして秘めた情熱とたぐいまれな想像力で「光源氏=光る君」のストーリーを紡いでゆく姿を描く。脚本を手掛けるのは、『セカンドバージン』や『知らなくていいコト』『恋する母たち』などで知られる大石静さんで、今回が2度目の大河ドラマ執筆となる。

THE GOLD 60編集部