「どん底の状態にいても幸せを見つける力がある」

――「定子は幸せだったのか、不幸だったのか?」というような、誰かが幸せだったかどうかは周りがジャッジするべきことではないとは思うのですが、高畑さん自身は演じられていてどんなふうに感じましたか? また、定子が幸せを感じた瞬間があったとしたら、どんな瞬間だったと思いますか?

高畑:難しいですね……幸せ。定子の場合は幼少期が幸せだったんですよね。でも家族が去ったり離れていったりしてしまうのは辛いことだったと思いますし、おそらく元々なかったものがないことよりは、元々あったものがなくなることのほうがより喪失感は強いのかなって。特に人生の後半は幸せだったとは言い切れないとは思うのですが……。

でも、私が定子を好きなのは、どれだけどん底の状態であっても、幸せを見つける力、気力がある方なんじゃないかなと思っていて、その強さがすごく素敵だなと思います。だからこそ、清少納言が書いてくれた『枕草子』の文章に幸せを見出せたのかなって。清少納言ととりとめもない話をするというシーンも出てくるので、そんな瞬間に穏やかな幸せを見出していたのかもしれないですね。

(C)NHK
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――そんな強さを持った人だからこそ、清少納言とも唯一無二の関係を作れたのかもしれないですね。

高畑:そうですね、おそらく自分というものがちゃんとあった人だから、清少納言との関係性を作れたり、一条天皇にも愛されたのかなと思います。でも、一条天皇の寵愛を受けすぎたからあんな最期になってしまったし、頭が切れたから姑(藤原詮子)にも煙たがられたりしてしまって、彼女の良いところがマイナスに転んでしまう瞬間も多々あるので、もっと鈍感だったらこんなに苦しまなくても済んだのかもしれないですね。

(C)NHK
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『光る君へ』

『光る君へ』は、平安時代中期の貴族社会を舞台に、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書き上げた紫式部(まひろ)が主人公。のちの紫式部であるまひろが、藤原道長への思い、そして秘めた情熱とたぐいまれな想像力で「光源氏=光る君」のストーリーを紡いでゆく姿を描く。脚本を手掛けるのは、『セカンドバージン』や『知らなくていいコト』『恋する母たち』などで知られる大石静さんで、今回が2度目の大河ドラマ執筆となる。

THE GOLD 60編集部