矢部「一生ここで勤めるんだ、みたいな気持ちはあるんじゃないかな」

――放送も折り返し地点に入り、それぞれ乙丸と百舌彦になって長いと思うのですが、演じられて気付いた部分や思うことってありますか?

矢部太郎さん(以下、矢部):乙丸は、かなりいい年だと思うんですよね。だから、一生ここで勤めるんだ、みたいな気持ちはあるんじゃないかな。

もうこの年で転職というのはないかな、みたいな。人生がまひろさんや為時さんやこの家の人とともにあるなあという感じでしょうか。

本多力さん(以下、本多):乙丸は毎回出ているのですが、僕は初めの10回ぐらいまでは大体出演していたけれど、今は出ていない時期もあるので、「もしかしてこのままいなくなったらどうしよう?」のような、そんな不安が回を重ねるごとに増えてきました。「いつ死ぬんやろう?」みたいな。

――まだ大丈夫ですか?

本多:まだ大丈夫だとは思っているんですけれど、その「まだ大丈夫かな?」と待っている時間が一番……ハアハア……みたいな(笑)。(台本を読んで)「よかった!まだ生きてる!」みたいな。

矢部:僕も、百舌彦さんがクビになりそうなときにビクってなりました。

(C)NHK
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本多「道長と百舌彦のような関係が人生の中にあったら素敵」

――こうしてお話を聞いたり、放送を見たりしていると、今も昔も人間の心情だったりやっていることって変わらないなと思うのですが、お二人が「これは平安と変わらないな」とか、逆に「ここは今とは違うな」と思う部分はありますか?

本多:(脚本家の)大石(静)さんが「顔合わせのときに、時代劇時代劇したものというよりも、今の時代に通ずるものをやりたい」というようなことをおっしゃっていたので、自分も今の感覚でやらせてもらったらいいのかなと思って演じている部分はあります。

一方で、走る時に腕を振らないとか、家の中に入るときは必ず左足からなどの所作もあるので、そういう部分はきちんとやらないといけない、という感じですね。

矢部:やっぱり人と人との関わり方は今と変わらないのかなという感覚ではいますけれど、身分の差はすごくあるなとは思いますね。

本多:思っている以上に身分の差ってすごいんやなと思います。

矢部:乙丸も文字を読めるかはわからないですよね。

本多:百舌彦もわからないですね。

戦国時代だと、仕えていてどこかで裏切るとかあるじゃないですか。でも僕らにはそれがないので。百舌彦の場合は(道長と)一緒に一緒に出世するっていう形はありましたけど。でも、そこの裏切りが一切ない関係というのはあまりないよなと思って。

その関係というのは、親友とも違うし……。道長と百舌彦のような関係が人生の中にあったら素敵だなと思いました。

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