毎月の支出を抑えるためには、固定費の削減が欠かせません。そして、固定費削減に効果的なのが「保険の見直し」です。ただ、保険を見直した結果、固定費を削減できたにもかかわらず後悔するケースも……いったいなぜでしょうか。FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏が、具体的な事例をもとに、保険の見直しで絶対にやってはいけない注意点と見直しのポイントを解説します。
保険営業マン「月の負担が半分になりますよ」…年収750万円の59歳・定年直前サラリーマン“大喜び”で保険を見直し→大後悔のワケ【FPの助言】
Aさんの「見直し前・見直し後」の保険内容
Aさんの見直し前の保険内容
Aさんが30年前に加入した保険の内容は、下記のとおりです。
種類:終身保険
保険料:月々3万円
<保障内容>
死亡保障:5,000万円
医療保障:1日につき入院給付金1万円、手術給付金20万円、通院給付金5,000円
災害特約:災害による死亡時にはさらに1,000万円の保障
予定利率:6%
解約返戻金:解約時点で約500万円
Aさんが30年前に加入したこの保険は、俗に“お宝保険”といわれるものです。現在ではこのような内容のものはなく、非常に価値の高い保険といえます。
一方で、Bさんの提案に従って新しく加入した保険の内容は、下記のとおりです。
種類:定期保険
保険料:月々1万5,000円(前と比べ1万5,000円の節約)
<保障内容>
死亡保障:2,000万円
医療保障:1日につき入院給付金5,000円、手術給付金10万円、通院給付金なし
災害特約:災害による死亡時にはさらに500万円の保障
解約返戻金:なし
Aさんが保険の見直しを決断したワケ
FPがAさんに話を聞いたところ、定年後の収入減少を見越して、月々の支出を少しでも減らしたいと考えていたAさんは、月々の保険料が1万5,000円も削減できることに魅力を感じたそうです。
また、BさんはAさんへ説明する際に、「月々の負担は非常に軽くなるのに、保障内容は少し減るだけです」と、月々の支払が大幅に減るという点を強調していたようです。そのため、Aさんは内容を深く理解する前に、単純な比較で切り替えがいい選択だと判断してしまいました。
さらに、同僚が保険の見直しで支出を減らしたという話に影響され、自分も同じように見直しを行うことで家計を楽にできると安易に考えてしまったようです。
しかし実際には、たしかに月々支払う保険料は減ったものの、保障内容が大幅に削減されてしまいました。特に、医療保障が下がったことが懸念されます。
Aさんの年齢を考えると、今後入院や手術の必要性が高まることが予想されます。そのため、医療保障が減ることで実際にお金が必要になるときに困るかもしれません。