酸いも甘いも嚙み分けた大人の世代に見てほしい映画を紹介する「G60シネマ」。今回は、十代目・松本幸四郎さんが五代目・長谷川平蔵を演じた劇場版『鬼平犯科帳 血闘』(山下智彦監督)(公開中)を紹介します。
十代目・松本幸四郎が五代目・長谷川平蔵に
時代小説の大家・池波正太郎さんの三大シリーズの一作品に数えられ、時代劇の金字塔として長きに渡って愛され続けてきた『鬼平犯科帳』。歴代の『鬼平犯科帳』では、初代松本白鸚さんが初代・長谷川平蔵役を務め(1969年~1972年)、その後、丹波哲郎さん(1975年)、萬屋錦之介さん(1980年~1982年)、二代目・中村吉右衛門さん(1989年~2016年はテレビ版、1995年は劇場版)と受け継がれてきた。
このたび、十代目・松本幸四郎さん版の『鬼平犯科帳』第一弾がテレビスペシャル『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』として時代劇専門チャンネルで2024年1月8日に放送され、第二弾が劇場版『鬼平犯科帳 血闘』として公開された。
若かりし頃の平蔵のエピソードも
長谷川平蔵が若かりし頃に世話になった居酒屋の娘・おまさ(中村ゆりさん)が平蔵の密偵になりたいと訪ねてくる。平蔵はおまさの申し出を退けるが、おまさは平蔵が芋酒屋「加賀や」の主人と盗賊の二つの顔を持つ鷺原の九平(柄本明さん)を探していることを知り、独断で探索に乗り出す。九平を探すうちに兇賊・網切の甚五郎(北村有起哉さん)の企みを知ったおまさは首尾よく網切一味の中へ入り込む。しかし、おまさは絶体絶命の危機に陥って……というストーリー。
おまさを演じた中村さんをはじめ、鬼平に相対する盗賊一味の引き込み女・おりんを演じた志田未来さん、長谷川平蔵がなぜ“鬼平”と呼ばれるようになったのか、その鍵を握るおろくを演じた松本穂香さん、平蔵を見守る妻・久栄を演じた仙道敦子さんなど女性陣の凛とした演技が光る。
それぞれの過去や思い、立場から平蔵を思う女性たちが抱える哀しさや心の機微、表情が丁寧にスクリーンに映し出され、それが松本幸四郎版の長谷川平蔵を優しさと厳しさ、そして色気をあわせ持つ“鬼平”たらしめている。ぜひスクリーンで“令和の鬼平”の姿を見届けてほしい。
THE GOLD 60編集部