さまざまな人の手が必要な終活は、早めに頼れる人を見つけておく事が大切です。ひとり暮らしが心配というタイミングから結べる契約もあります。周りの知り合いだけでなく、自治体の終活支援や民間企業の信託商品もあるのをご存じでしょうか。イラストレーターなとみみわ氏の著書『おひとりさまの後始末』から詳しく紹介します。
誰にどこまで頼めるか早めに相談を
おひとりさまの四大困り事「病気・けが」「介護・認知症」「死後の手続き」「相続」が実際に起こったら、誰に頼ればよいのでしょうか。実際に頼れる人は、親せきや友人、知人などのほか、弁護士、司法書士、行政書士、税理士、ファイナンシャルプランナー、終活アドバイザーといった専門家、金融機関や自治体、地域包括支援センター、社会福祉協議会、民生委員など地域の施設やその担当者、いろいろな人がいます。
誰にどこまで頼めるか、今のうちから相談しておきましょう。もちろん友人同士で頼り合うのもよいですが、できれば若い人のほうがベター。同世代だと、自分と同じように年をとっていき、終活の助けがともに必要になるからです。
専門家であれば契約を結ぶ必要があります。親しい人でも、金融機関などの事は契約が必要です。親せきや友人、知人など頼れる人と契約しておくといいでしょう。
契約の種類は、生前のために「見守り契約」「(財産管理等)委任契約」「任意後見契約」、死後のために「死後事務委任契約」「公正証書遺言」など。一般的な契約書でOKのものと公正証書の作成が必要なものがあります。ただし公正証書の作成が不要でも、公正証書の方が契約の信頼性が高まります。専門家に依頼する場合契約書の作成料や実行援助費用のほか、公正証書を作成するならその手数料も必要になります。
「見守り契約」とは、判断能力は低下していないけれど、ひとり暮らしで何かあったら気づいてもらいたいという時に交わす契約。専門家や事業者と契約すると、契約書作成時の費用のほか、月に1回の電話連絡や定期訪問などの実行援助費用がかかります。
「(財産管理等)委任契約」とは、判断能力はあるけれど、身体能力が低下していて財産管理を頼みたい時の契約。一方、「任意後見契約」は、あらかじめ後見人になってくれる人(受任者)と、将来、認知症で判断能力が不十分になった時に財産管理や身上監護を本人の代わりに行ってもらうために契約します。判断力が衰える前なら本人が「任意後見人」を選んで、契約できますが、判断力が衰えた後だと家庭裁判所によって「法定後見人」が選任されます。
任意後見契約は、必ず公正証書で行います。契約を結んでおいて、本人の判断能力が不十分になった時に、受任者や親族などが、家庭裁判所に申し立てます。その際に、家庭裁判所が任意後見人を監督する「任意後見監督人」を選任し、そこで初めて任意後見契約の効力が発生し、受任者は任意後見人として仕事ができる事になります。
「死後事務委任契約」とは、文字通り自分が亡くなった後の事務を第三者に任せる事。相続人や親族であれば問題なくできますが、それ以外は、契約が必要。友人や知人のほか、司法書士や行政書士など専門家に依頼できます。また代行で行う事業者もあります。死後事務委任契約を締結する際は、死後の事務処理のために「預託金」としてまとまった費用を受任者に預けておく場合もあります。もし友人や知人に頼む場合は、契約書や
遺言書に費用を払う事を書いておき、ビジネスライクにお願いしておくとよいでしょう。
おひとりさまが亡くなった後、自分が望む人や団体に財産を残すために「遺言書」を書いておくとよいでしょう。公証役場で「公正証書遺言」を作成しておけば、確実に自分の望む形が実現できるでしょう。