老後に一人暮らしをしていると、必ず考えなくてはならないのが「現住居の相続問題」です。おひとりさまの不動産の相続トラブルには、どのようなケースが考えられるでしょうか。「いつかは考える」では遅すぎるかもしれません。本記事では、生前整理・遺品整理のプロの山村秀炯氏による著書『老後ひとり暮らしの壁 身近に頼る人がいない人のための解決策』(アスコム)から、事例をもとにおひとりさまの不動産相続について解説します。
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孤独死した部屋の相続放棄
相続放棄の事例も紹介しておきます。賃貸アパートの2階でおひとりさまが孤独死して何週間も発見されず、1階の天井まで体液で汚損してしまった事例です。
大家さんが、保証人になっている故人の姉に連絡をして、その方が私のところに遺品整理と原状回復をご依頼されました。ところがやはり建物の損壊が大きくて、見積もりを出した時点でお姉さんがびっくりして、相続放棄したいと言い出したのです。しかしそうなると大家さんが困ってしまいます。
話し合いが持たれて、相続放棄をしても保証人の責務までは放棄できないということになり、最終的にはお姉さんが費用を持ってくれたのですが、このような事例はよくあることなので、毎回どうなるかとひやひやします。
「相続放棄」ではなく「限定承認」を行うと…
ちなみに相続放棄をすると一切の遺品を受け取れなくなるのですが、お金にはならないけれども形見としてもらいたいものがあるという場合は、相続放棄ではなく限定承認という方法もあります。
限定承認とは、プラスの遺産とマイナスの遺産を相殺できる範囲で両方を相続し、それ以上の負債は引き継がないという方法です。限定承認を行えば、多額の負債を引き受けることなく、遺産相続ができます。この限定承認も、相続放棄と同じく、死亡を知った日から3か月以内に申し立てを行う必要があるので注意してください。
山村 秀炯
株式会社GoodService
代表