二世帯住宅をめぐって争う長男と次男

高田さん(仮名)は2人の息子がいる90代の男性です。息子たちはすでに結婚して家を出ていて、奥さんも亡くなっていてひとり暮らしをしています。

高田さんは1月に軽い認知症が発覚して、施設に入居することになりました。その後8月には、実家を取り壊して二世帯住宅に建て替え、長男夫婦が一緒に住むという話が出ます。その際に不動産屋からの助言で、土地の名義を長男に書き換えました。これは生前贈与というかたちになります。

まさかのタイミングで高田さんが死去…

ところが実際に家を取り壊す前の9月に、高田さんが施設で誤嚥性肺炎にかかって、亡くなってしまいました。高田さんの資産は自宅の不動産が大半でしたが、それはすでに生前贈与で長男のものになっています。亡くなる直前の生前贈与は相続財産の計算に入るのですが、すでに長男のものになっているので、あらためて分割はできません。

本来であれば長男と次男で半分ずつになるはずだった相続が、長男のほうが多く相続することになって、次男のほうは遺留分の4分の1程度しかもらえなくなったわけです。これで納得する人もいるのですが、このケースでは次男が裁判を起こしました。

8月の贈与というのは、すでに高田さんが認知症で判断能力を喪失しているので無効であり、不動産を売却して半分ずつの相続にするべきだと主張したのです。

このようなことになる前に、つまり認知症と診断される前に遺言書を作っておけば、問題なく長男に不動産を相続させられたのではないかと思います。