災害時、家の中は安心・安全と思っても、トイレの水洗機能は止まる可能性があります。いざというとき困らないよう、普段から自宅トイレの構造をチェックし、非常時の対応を想定しておくことが大切です。防災トイレ専門家である加藤篤氏の著書『トイレからはじめる防災ハンドブック』(学芸出版社)より、災害時のトイレのチェック箇所、使用時の注意項目を見ていきましょう。
断水時、風呂の残り湯や雨水があればトイレも流せるが…〈洗浄タンク〉ではなく〈便器〉に直接流したほうがいい「意外なワケ」【防災トイレ専門家が助言】
恐ろしい…便器内に溜まった水の跳ね出しは「汚水逆流」の兆候
水洗トイレの便器の底に溜まっている「封水」が便器から跳ね出す現象が起きたら、排水管のトラブルによる汚水の逆流が疑われます。排水管はつながっていて、汚水は自然流下で高いところから低いところへと流れていきます。しかし、排水管のどこかに詰まりや管の逆こう配などの異常があると、汚水がスムーズに流れずに溜まってしまうことがあります。
このような状態で上階から汚水を流すと、管内の汚水が行き場を失い、どこかからあふれることになります。前兆として、まず管内の空気が逆流し、封水内からポコポコと空気が上がってきます。そしてそれが進行すると、封水の跳ね出しが起こります。
この現象は、大雨で浸水し、下水道や排水横主管が満水になっている場合に水洗トイレを流そうとした場合にも起きる可能性があります。例えば、便器のフタを閉めておき、その内側が濡れていたら、汚水逆流の発生を疑いましょう。
停電時は散水栓から水を確保する
私たちの住戸への給水は、道路に埋設されている配水管から給水管を分岐して敷地内に引き込んで水を届けます。低層住宅の場合は、そのまま住戸内の蛇口に水が送られますが、高層住宅は水道水圧のみでは圧力が足りないので、ポンプで増圧・加圧します。その際に、受水槽で貯めてから増圧・加圧する方式もあります。
つまり、ポンプを用いて給水している建物は、災害で停電するとポンプが動かなくなるので断水します。一方で、低層住宅は停電時も水が出る可能性が高いです。ただし、水道施設から水を送る圧力が低下している場合は低層住宅であっても水が出なくなります。
ポンプを使用している建物の場合、停電によるポンプの停止で断水しているのか、水道施設や配水管の被災により断水しているのかを見極める必要があります。なぜなら、ポンプが原因での断水であれば、敷地内には水が供給されているため、何らかの方法で水を確保できるからです。
ポンプ停止による断水かどうかを簡易にチェックするひとつの方策として、屋外で水を使うための給水口(散水栓等)から水が出るかどうかをチェックする方法があります。ポンプを介する前の給水口から水が出るのであれば、地域への給水は機能していることになります。
日ごろから散水栓等の場所を確認しておきましょう。