身に覚えのない「1本の電話」

それからしばらく経ったある日のこと。無事すべての相続手続きを終えてほっとしていたAさんのもとに、1本の電話がかかってきました。画面を見ると、身に覚えのない不動産会社からです。聞けば、父親名義の投資用不動産(区分マンション)について相談したいといいます。

「なんのことだ……そんなの知らないぞ!?」

混乱したAさんですが、話を聞きながらふと、父親の口座に毎月入金されていた“謎の7万5,000円”の存在を思い出しました。

「もしかして、あのお金って家賃収入だったのか?」

そうです。あの7万5,000円は、父親名義の投資用物件に関する入金(家賃収入)でした。

「やばい、相続財産の申告が漏れている!」うっかり相続税の申告漏れを犯してしまったAさん。「たしか、税務調査が来たらたくさんお金を払わなければいけなかったはずだ……」Aさんは申告漏れのペナルティを想像して戦慄しました。

「相続税の申告漏れ」で課せられる4つのペナルティ

Aさんの場合、あまり調査せずに相続を開始していました。先にも述べたように、しっかりとした調査を行わずに相続を開始してしまうと、新たな相続人が現れたり、相続税の申告漏れが発覚したりと、手続きを終えてほっとした矢先に思わぬ事態を招いてしまうことになりかねません。

Aさんのように相続税の申告漏れがあった場合、次の4つのペナルティが課せられる可能性があります。

①延滞税

②無申告加算税

③過少申告加算税

④重加算税

これらの加算税について、悪意があったか否かは税務調査によって担当者が判断します。自分としては悪意なく“うっかり”だったとしても、悪意があると判断されてしまいかねないため、注意が必要です。

また、相続税の申告は相続開始日の翌日から10ヵ月以内に行わなければなりませんが、間違いがあった場合は「訂正申告」「修正申告」「更生の請求」のいずれかを行います。

相続開始日の翌日から10ヵ月以内に訂正する場合は「訂正申告」、この期限を過ぎてしまった場合は、過少申告の場合「修正申告」、過大申告の場合は「更生の請求」となります。

このうち、修正申告に期限はなく、何度でも行うことができます。しかし、税務調査の連絡があったあとの申告は過少申告加算税が課せられることになるため注意が必要です

幸いなことに、税務調査の連絡前に申告漏れに気づいたAさん。期限内の修正申告を行うために司法書士事務所と税理士事務所に駆け込み、手続きのサポートを依頼しました。

「こんなことになるなら、はじめからお願いしておけばよかった……」

専門家の速やかな手続きによって、無事に修正申告が完了。Aさんは後悔しつつも、ようやく心から安心したのでした。