誰にとっても身近で興味がある「カネ」が題材のマンガ『闇金ウシジマくん』。作家で元外交官の佐藤優さんは「ウシジマくんは現代の日本社会が抱える問題の事例集にもなっている」と評価します。本稿では、佐藤さんの著書『天才たちのインテリジェンス』(ポプラ社)から一部抜粋して、佐藤さんと『闇金ウシジマくん』の作者・真鍋昌平さんの対談をお届けします。
真鍋「店でたまたま隣に座った人にもどんどん話しかけちゃいますね」
佐藤:私は沖縄出身なので気になっていたんですが、なぜ「逃亡者くん編」の舞台を沖縄にしたんですか?
真鍋:取材中にたまたま沖縄に逃げた人の話を聞いたんです。作中で描いた、2部屋を借りてカネを隠す方法も実話をもとにしています。
何度か取材で行くうちに、沖縄って観光で行くにはいいけれど、住むとしたら娯楽も少なくて、いい仕事もあまりない。だからパチンコやお酒にハマってお金を借りるしかなくなるという環境になっていくんだなと、構造がわかった気がします。
佐藤:沖縄はある意味、日本の矛盾が集約している土地ですから。それにしても毎回、かなり綿密な取材をされているんですね。
真鍋:シリーズごとのキャラクターはわりとモデルがいます。1人のことも複数のこともありますが、裏社会に詳しいライターさんや知人のツテをたどって話を聞かせてもらっていて。ウシジマを始めとするカウカウファイナンスの主要人物には特にモデルはいないんですけど。あ、ウシジマが飼っている「うーたん」は昔飼ってたうさぎがモデルです。名前もうーたん。
佐藤:そうでしたか。かなり闇深いテーマにも切り込んでおられますが、取材で危ない目に遭うことはないんですか。
真鍋:ヤンキー全盛期の工業高校出身なので、「輩」の方々に対しても一般の人より文化的抵抗は少ないというか、適度な距離感をキープするバランス感覚はあるほうだと思います。むしろ自分は酔っ払って路上で寝たりするので、そちらのほうが危険かもしれません。
佐藤:お酒はどんな方と飲むんですか。
真鍋:取材相手とか、漫画家とか。店でたまたま隣に座った人にもどんどん話しかけちゃいますね。
佐藤:人への興味がとても強いんですね。
真鍋:そうですね。実は自分も佐藤さんの本を読んでいて、すごく人に対する興味が強い方なんだなって、勝手にシンパシー感じてました。
佐藤:それは何よりです。