メッセージングアプリと聞くと、日本では大多数の人がLINEを思い浮かべると思います。LINEは、日本やタイ、台湾など一部の国では主要なメッセージングアプリですが、世界規模で見るとシェアはそれほど高くありません。それでは、世界ではどんなメッセージングアプリが利用されているのでしょうか。みていきましょう。
進化の鍵を握るのは「チャットボット」?世界3位のシェアを誇る「WeChat」から読み解くメッセージングアプリの未来 (※写真はイメージです/PIXTA)

Telegram、Signalなど最新アプリの台頭

最近、「Telegram」や「Signal」などの匿名性の高い最新アプリがシェアを伸ばしています。その理由は主に以下の3つが挙げられます。

 

1つは、プライバシーへの関心の高まりです。近年、メッセージングアプリにおけるプライベートチャットの流出が問題となっており、一般ユーザーも自分のデータやコミュニケーションが監視されない環境を求める傾向にあります。匿名性の高いアプリは、そのニーズに応えているといえるでしょう。

 

2つ目の理由として、TelegramとSignalはエンドツーエンドの暗号化を提供しています。これは、通信内容が送信者と受信者の間でのみ復号化され、中間での傍受や盗聴を防ぐ仕組みです。ユーザーは自分の情報やメッセージが安全に保護されることを望んでおり、このようなセキュリティ機能の普及が広く支持されています。

 

3つ目は、オープンソースの透明性です。TelegramとSignalはオープンソースのアプリケーションとして開発されています。これは、ソースコードが公開されており、セキュリティ専門家や開発者コミュニティが独立して検証できることを意味します。オープンソースのアプリはセキュリティの信頼性が高まり、ユーザーはその透明性に対して安心感を持って利用することができるのです。

 

しかし、これらのアプリは、その匿名性の高さ故に、犯罪使用が増えているという課題も生じています。犯罪者は匿名性を利用して不正な活動を行う可能性があります。今後は匿名性と犯罪使用防止のバランスをどのようにとっていくかが重要な課題となるでしょう。

日本のメッセージングアプリの未来

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

メッセージングアプリは、単なる個人やグループ間のコミュニケーションツールに留まらず、WeChatのようにショッピングや支払い、予約機能など社会生活を送る上でのさまざまな側面を担うツールとして重要性を増しています。このような変化に伴い、チャットボットの役割もますます重要になっていくでしょう。

 

またチャットボットの開発が進むほどに多くのシーンで利便性が向上し、メッセージングアプリはますます人々の生活になくてはならないものになっていくと予想されます。

 

TelegramやSignalなど新しいアプリの台頭は気になるところですが、メッセージングアプリは周囲の人々が同じアプリを使用しなければアプリとしての機能を果たしません。日本国内でいえば、LINEがほかのアプリに取って代わられることは、余程のことがない限りあり得ないことです。

 

LINEは、すでに企業の公式LINEアカウントから質問ができたり、お知らせを受け取ったりといったチャットボット機能を実装していますが、2021年3月に行われた「Zホールディングス」との経営統合によって、事業展開が今後さらに加速することが予想されます。

 

すでに具体的な取り組みが行われており、Zホールディングスの子会社であるYahoo!と協力し、LINE上でYahoo!から提供される災害情報を配信したり、「Yahoo! JAPAN」のトップページから「LINE MUSIC」にアクセスしたりすることが可能になっています。

 

さらに、同じくZホールディングスの子会社である「PayPay」と「LINE Pay」が連携し、「PayPay」の利用可能な店舗では、LINE Payも同様にQRコード読み取りによる決済が可能となっています。

 

メッセージングアプリは、人と人との交流の核となる「コミュニケーション」を構築させるツールです。そこに他のさまざまな生活インフラが結びつき、一つの大きなプラットフォームとしての機能を果たしていくことは必然であるとも言えます。

 

LINEは今後も国内でのシェアを維持し、TelegramやSignalのような匿名性の高い最新アプリの技術を取り入れつつ、WeChatのような多彩な機能を盛り込んだ万能アプリに進化していく可能性があります。その日もそう遠くないかもしれません。

 

<出典>

Hootsuite株式会社「9 of the Most Popular Messaging Apps in 2023」

Statista株式会社「WhatsApp penetration rate among global messaging app users as of April 2022, by country」

 

 

吉田康介

フリーライター