節税狙いで「生命保険」「車」を活用する際の留意点

今回は、節税狙いで「生命保険」「車」を活用する際の留意点について見ていきます。本連載では、株式会社スペースワン・代表取締役・徳永貴則氏 監修、株式会社エッサム編集協力、資金繰りを支援する税理士の会著、『会社の資金繰り 絶対!やるべきこと知っておくべきこと』(あさ出版)から一部を抜粋し、金策に追われることなく、「資金繰り」のいい会社を目指すための実践的なノウハウを紹介します。

会社の税金対策は欠かせないが…

「今期は1000万円の利益が出たので、法人税などの税金が350万円、残りは650万円になります」

 

税理士からこのような説明を受けたとき、あなたはどう思いますか。

 

「そんなにたくさんの税金を払うのは嫌だ。できるかぎり節税したい」

 

多くの経営者は、そう答えます。

 

会社に多くのお金を残すために、税金対策は欠かせません。

 

ただし、極端に利益を減らそうとしてはいけません。1円でも納税額を減らしたいという気持ちはよく分かりますが、手元に資金が残らないような方法をとり、経営に悪影響を与えてしまっては、元も子もありません

 

税金対策を一切行わず、利益が減ったとしても、ゼロになることはありません。650万円は確かに会社のお金として残るのです。

 

節税の代表的な手法に「生命保険」「車」があります。この2つに共通するのは「お金が外に出ていく節税方法」であることです。それぞれの注意点を説明します。

多くの経営者が実践している生命保険の活用

【生命保険】

生命保険が節税手法のひとつになっているのは、保険料の2分の1を経費として計上できる法人向けの商品がたくさんあるからです(全損タイプのものも多くありますが)。

 

適切なタイミングで解約をすれば返戻率100%近くで返戻金が入り、資産として課税されるのは「返戻金から保険料総額の2分の1を差し引いた金額」であるため、大きな節税効果があります。

 

「経費を増やして納税額を減らしつつ、計画的に社員の退職金などの資金を作ることができる」と、多くの経営者が活用しています。

 

ただし、落とし穴があります。

 

返戻率が100%になるには、商品によって異なりますが、およそ10年近くの継続契約が必要です。解約のタイミングを外すと、返戻金が7割や8割に減ってしまいます。また、支払った保険料の2分の1は経費に、残りの2分の1は資産として計上されるため、返戻金が減った場合、受け取る現金よりも資産のほうが大きくなってしまうケースがあります。

 

さらに、利益が減れば金融機関からの融資を受ける際に不利になります。数年後に返戻金が入るといっても、いま手持ちの現金が少なければ、事業を健全にまわすことができません。

 

経営者の中には「今期1000万円の利益が出たから、年間1000万円の役員保険に入って利益をゼロにしよう」と考える人がいます。

 

たくさんの利益が出たから節税のために保険に入る、という考え自体は間違っていません。しかし今年と同じだけの利益が、来年も出るとは限りません。もし、来年の利益が今年の半分程度まで落ち込んだとしても、同じ金額の保険金を払い続けなければいけません。保険金を支払うことで赤字になれば、金融機関から融資を受けることも難しくなります。

 

目先の節税だけを考えて極端な選択をすると、このような『保険貧乏』に陥ってしまいます。気を付けてください。保険にはあくまで「入口」と「出口」の分析が必要です。本当に自身の退職金や他の役員や従業員の福利厚生のためのものなのか?自身の私利私欲だけでやろうとしていないか?よくよくお考えください。なお、生命保険を全否定しているものではなく、あくまで「バランス」が必要なのです。

資金状態を正確に把握し、身の丈に合った車種を選ぶ

【社用車】

事業に必要な車を購入した代金は、経費として計上できます。一度に全額を計上するのではなく、数年かけて減価償却費として計上していきます。つまり数年にわたって、利益を下げることができるのです。

 

そのため、大きな利益が出たときに、車の買い替えや新規購入を行う経営者はたくさんいます。しかも会社の規模と合っていない高級車を購入するケースをよく見かけます。高額であればあるほど、利益を減らして、納税額を下げることができるからです。

 

購入した費用は毎年減価償却費として利益を下げる効果がありますが、手持ちの現金が確実に減ります。現金が減っても資産として計上されるので、赤字に気づかず、資金繰りが悪化する可能性が高くなります。

 

利益が出たときに、ボロボロになった社用車を買い換えること自体は、問題はありません。納税額を減らすために高級車を購入するのではなく、会社の資金状態を正確に把握して、身の丈に合った車種を選びましょう。どうしても趣味で高級車が欲しいのであれば、ご自身の役員報酬を引き上げてご自身で買いましょう。なぜなら、最も節税策で効果的なのは「役員報酬」を引き上げることです。なお、高級車すべてが事業用として税務署から認められるとは限りませんのでご注意ください(詳しい説明は他の図書に譲ります)。

本連載は、2016年6月23日刊行の書籍『会社の資金繰り 絶対!やるべきこと知っておくべきこと』から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載知識ゼロから実践! 会社の「資金繰り」を改善する講座

株式会社スペースワン 代表取締役

1972 年佐賀県出身。明治大学政治経済学部を卒業し、大和銀行(現りそな銀行)に入行。都内を中心に法人店舗にて主に法人融資先の新規開拓業務を行ってきた。本店融資部での経験もあり、審査部門での経験も豊富にある。2000 社ほどの銀行融資に携わった経験を活かし、株式会社スペースワンを立ち上げ独立。企業の「資金繰りアドバイス」にフォーカスを当てて、事業再生や経営改善のアドバイスを行っている。中小企業のみならず、税理士をはじめとした士業をクライアントとし、顧問先への助言、全国にて講演活動を行っている。教科書的な経営指導、融資アドバイスではなく、経営者に分かりやすく実践的なコンサルティングに定評がある。2012 年10 月に「金融税理士アドバイザー講座」を立ち上げ、税理士向けに銀行融資についての講演や金融知識の講義を行っている。

著者紹介

風張広美税理士・経営士事務所 所長税理士・経営士

平成23年国税局退官後、専業主婦を経て平成25年風張広美税理士事務所を開業。経営者の眠れない悩み事「資金繰り」を、税理士・経営士のノウハウで解決する。

著者紹介

ひらい税理士事務所 税理士・財務金融アドバイザー・MBA

企業にとって重要な資金調達業務を上手に進めるための、金融機関を意識した決算書の作成、アドバイス・資金繰り管理や融資に関する相談などをおこなっている。

著者紹介

窪木税務会計事務所 税理士

昭和61年 税理士登録、千葉県税理士会 柏支部、研修指導部在籍。 課税当局の税務調査に対し納税者の立場に立った税務解決を図る。

著者紹介

税理士法人桜頼パートナーズ会計小高事務所 税理士

27年間務めた税務署を退官し、独立開業。元税務職員の知識と経験を活かし、経営者にとって本当に必要な情報やノウハウを提供し、企業の存続、発展を支援。

著者紹介

土江誠一郎税理士事務所 税理士・AFP・IT コーディネータ

平成11年税理士登録後、平成18年独立開業。平成28年9月で開業10周年を迎える。接骨院・整骨院の会計、税務及び開業コンサルを得意とし、法人及び個人事業主の会計、税務や資産税など幅広い分野で活躍。

著者紹介

税理士/社会保険労務士/行政書士 森敏夫事務所 税理士・社会保険労務士・行政書士

税理士、社会保険労務士、行政書士、認定支援機関。融資を受ける際の政策金融公庫他の金融機関の紹介や融資申込時の経営計画の作成サポート等々、会社経営における最重要課題である資金についてもサポートしている。

著者紹介

浅井政晃税理士事務所 税理士

大学卒業後インテリアメーカーにて営業として5年間勤務した後、税理士業界に飛び込んだ異色の税理士。平成22年税理士登録。現在はボランティア活動も精力的に行っており、大田区を中心に専門家向けの勉強会や市民向けの無料相談会などの事業を行う一般社団法人おおた助っ人の理事も務めている。

著者紹介

高田寛税理士事務所 税理士

東京都文京区の30代若手税理士。従業員5名以下の会社専門。資金繰りで悩んだら、まず資金繰りの悪化の原因を「正確に」把握、会社の状況に合わせて将来の資金を明確化・数値化。

著者紹介

税理士法人ベリーベスト 税理士・MBA

税理士法人ベリーベストと弁護士法人ベリーベスト法律事務所、社会保険労務士法人ベリーベストを併設している。

著者紹介

飯塚税理士・行政書士事務所 税理士・行政書士

創業支援に力を入れ、創業者と一緒にビジョンとミッションを考え、市場分析と戦略を立てただけの事業計画書ではなく、創業者の思いのこもった事業計画書を作成し、目標に向かって事業が成長していくよう経営をサポートしている。

著者紹介

横田税務会計事務所 税理士

1975 年税理士登録後、横田税務会計事務所開設。現在、税理士3名を含む10名の正職員、平均年齢38歳。中小企業庁認定経営革新等支援機関・金融税理士アドバイザー・政治資金監査人。

著者紹介

中村泰宏税理士事務所 税理士

08年税理士登録後、税理士事務所を開業。再生支援協議会経験を有す。経営者の悩み事である「資金繰り」を、豊富なノウハウと的確なアドバイスでサポートする。

著者紹介

日比亮太郎税理士事務所 税理士

神奈川県を中心に小規模な事業者・法人に特化した経営専門税理士事務所。「開業支援」「融資サポート」を得意とし「補助金」獲得の実績も多数。

著者紹介

税理士法人さくらみらい国際会計事務所 公認会計士・税理士・神奈川大学経営学部非常勤講師

夢ある未来の実現のために、経営計画書と月次決算書で中小企業の底力を高める会計事務所として経営支援を行う。

著者紹介

糊智至税理士事務所 税理士・銀行融資プランナー協会正規会員事務所

お金に苦労しない経営を目指す社長に、中小企業・個人事業主様向けの財務戦略を提供し、中長期的な資金繰り管理と金融機関対応を貴社の財務部長的な立場で行なう。

著者紹介

佐々木康二税理士 行政書士事務所 税理士・行政書士

平成7年税理士登録後、平成10年佐々木康二税理士事務所を開業。

著者紹介

中央シティ税理士法人 税理士・特定行政書士・MBA・登録政治資金監査人

都市銀行役員、総務大臣政務官秘書、参議院外交防衛委員長秘書を経て、NFG 西日本ファイナンシャルグループを設立。神奈川工科大学大学院講師、国立筑波技術大学講師、早稲田大学総長室代議員。日本で単独第1 号の内閣総理大臣宛の「内部統制報告書」(J-SOX)を完成。『企業経営学』他、著書多数。

著者紹介

会社の資金繰り 絶対やるべきこと、知っておくべきこと

会社の資金繰り 絶対やるべきこと、知っておくべきこと

徳永 貴則 風張 広美 平井 敬士 窪木 康雄 小高 正之 土江 誠一郎 森 敏夫 浅井 政晃 高田 寛 岸 健一 飯塚 正裕 横田 昭夫 中村 泰宏 日比 亮太郎 舟生 俊博 糊 智至 佐々木 康二 南村 博二

あさ出版

「なんでこうなってしまうのか・・・」と手遅れになる前に!知識ゼロでもできる「資金繰り表のつくり方」から、「銀行交渉、業種別のポイント」まで。本書では、会社経営の最重要課題の1つである、資金繰りについて、知識ゼロで…

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