遺言書に書かれていない財産が存在・・・どう対応するか?

今回は、遺言書に書かれていない財産が存在したケースについて、対応法などを見ていきます。※本連載では、税理士・内田麻由子氏、弁護士・武内優宏氏の共著『誰も教えてくれなかった「ふつうのお宅」の相続対策ABC』(セブン&アイ出版)の中から一部を抜粋し、実際のケースをもとに、「ふつうのお宅」で起こりうる、身近な相続(対策)の事例を見ていきます。

「遺言書」を残してくれた母親

松原ハツさん(93歳)は、夫を20年前に亡くしてから、東京都内で一人暮らしをしている。自宅の2階を印刷会社に賃貸し、その家賃収入と年金でつつましく生活していた。横浜に住む二女の桃子さん(65歳)が、週2日通ってきて賃貸業や家事を手伝ってくれるので助かっている。

 

ある日、桃子さんがいつものように実家に行くと、ハツさんが居間で倒れていた。「お母さん、しっかりして!」桃子さんは慌てて救急車を呼び、病院へ。その3日後、母ハツさんは静かに息を引き取った。親戚とごく親しい人たちで葬儀を行い、ハツさんの位牌を実家の仏壇に納めた桃子さん。何気なく仏壇の引き出しを開けると、そこには母のいつものしっかりとした字で「遺言書」と書かれた封筒が・・・。

遺言通りに執行か、それとも話し合いか?

「先生、うちでご葬儀をした方なんだけど、相続のことで相談があるそうで……」

 

いつも面倒見のよい葬儀社の社長さんからの電話です。

 

数日後、都内のご実家で桃子さんにお会いしました。まずはお線香をあげさせていただき、お母様の想い出話などをお聞きしていると、桃子さんが「これなんですけど……」と言いながらハツさんの自筆証書遺言を持ってきました。封はしていなかったと言います。遺言書には次のように書かれていました。

 

遺言書

 

私、松原ハツは、次のとおり遺言します。

二女の森田桃子を遺言執行者に指定する。

長女の小林梅子へ、○○銀行普通預金2000万円を相続させる。

二女の森田桃子へ、私が住んでいる港区○○1−2−3の土地と家を相続させる。

理由は、亡き夫の介護のために横浜から通ってくれてとても助かりました。私も高齢で独

居ですので、週2回桃子が手伝いに来てくれることを心より感謝しています。

孫の松原健へ、○○銀行普通預金2000万円を相続させる。

健は、松原家のお墓を守ってください。

孫の松原康へ、○○銀行普通預金1000万円を相続させる。

 

平成○年○月○日

                        東京都港区○○1−2−3 松原ハツ㊞

 

「お母様、ちゃんと考えていてくださったのですね。財産はこの遺言に書いてあるだけですか?」

 

と聞くと、桃子さんが、

 

「このほかに預金が2000万円ほどあるんです」

 

と言います。

 

「それでは、遺言に書かれていない財産については、4人の相続人で話し合いをして、誰がいくら相続するかを決めなくてはなりません(遺産分割協議)。遺言書については、家庭裁判所で検認を受ければ、遺言執行者に指定されている桃子さんが、この遺言どおりに財産分けをすることができます。もう一つの方法としては、遺言の執行をせずに、この遺言内容をふまえて、4人の相続人で遺産全体についてどのように相続するかを話し合って決めてもいいのですよ」

 

「先生、どちらの方法がいいでしょうか?」

 

と桃子さん。

 

【次回へ続く】

本連載は、2014年9月3日刊行の書籍『誰も教えてくれなかった「ふつうのお宅」の相続対策ABC』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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内田麻由子会計事務所 代表 税理士

一般社団法人日本想続協会代表理事。相続専門の税理士として、相続対策、事業承継対策、相続税・贈与税の申告業務を数多く手掛けている。節税対策・納税対策のみならず、家族の円満な相続をサポートしている。相続・税金に関する講演実績および新聞・雑誌等の取材実績多数あり。楽しくわかりやすい講演には定評がある。著書(共著)に『図解 いちばん親切な相続税の本』(ナツメ社)、『家族が亡くなった後の手続きが分かる本』(プレジデント社)など。監修に『親が死んだ5分後にあなたがしなければいけないこと』(永岡書店)、『クロワッサン特別編集 身内が亡くなったときの手続き』(マガジンハウス)など。

著者紹介

法律事務所アルシエン 弁護士

1980年、東京都に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。2007年弁護士登録後、2011年に法律事務所アルシエン開設。遺言・相続に関する案件や葬儀社の法律顧問業務など、「終活」に関わる法的問題を多く扱っている。また、遺言・相続セミナーなど講演も多数行っている。特に「おひとりさま」からの法律相談、孤独死した方の遺族からの相談に精力的に取り組んでいる。

著者紹介

誰も教えてくれなかった「ふつうのお宅」の相続対策ABC

誰も教えてくれなかった「ふつうのお宅」の相続対策ABC

内田 麻由子 武内 優宏

セブン&アイ出版

我が家の場合、税金はいくら? どれだけ節税対策できる? 相続対策エキスパートの税理士&弁護士が新税制への対応を書き下ろし! 本邦初の税理士と弁護士の“共著"で、これほど網羅的に書かれた本はありません。 "争続"紛争が発生…

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