(画像はイメージです/PIXTA)

会社を承継する場合、後継者に会社の株を集約する必要がありますが、株式の価格によっては後継者個人の資金では対処できないケースもあります。そのような場合、株式を会社が買い戻す「自己株式の取得」を行うことが考えられ、それに向けてのやり方や注意点を見ていきます。本連載は、事業承継士・中小企業診断士の中谷健太氏の著書『「子どもに会社をつがせたい」と思ったとき読む本』(あさ出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

非協力的な株主を排除する「スクイーズアウト」のやり方

株主が株式の集約に協力的でない場合や、譲渡交渉が決裂した場合、取引による株式の集約は困難になります。それでも株式を集約したい場合、あるいはその株主を排除したい場合には、強制的に少数株主を会社から締め出してしまう「スクイーズアウト(少数株主排除)」の手続きを行うことも考えられます。

 

スクイーズアウトでよく使用される方法は、「特別支配株主の株式等売渡請求」と「株式併合」です。

 

オーナーが、90%以上の議決権を有している場合には、「株式等売渡請求」を行うのが簡便です。株主総会を開く必要がないためです。「株式併合」を利用するときは、株主総会の特別決議が必要となります。特別決議は原則として、「議決権を行使することのできる株主の議決権の過半数を有する株主が出席する株主総会」で、「出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要」です(定款で加重・軽減されている可能性もあります)。

 

それぞれの方法について説明しましょう。

 

◆「特別支配株主の株式等売渡請求」

簡単に言えば総株主の議決権の90%以上を1人(または1社)の株主が保有している場合、他の株主全員に対して彼らの保有する株式全部を自分に売り渡すことを請求できるというものです。

 

株主総会手続きが不要であることなど、比較的簡略である一方で、総株主の議決権の90%を有していなければならないという高いハードルがあります。

 

◆「株式併合」

数個の株式を合わせてそれよりも少数の株式にする手続きです。現在スクイーズアウトには、この株式併合が利用されることが多いようです。

 

たとえば、10株を1株に統合します。これがなぜスクイーズアウトになるかというと、たとえば全部で100株を発行している株式会社において、オーナーが80株を持っており、残りの少数株主が9株、8株、3株を持っている場合に、10株を1株に併合するとします。この場合、オーナーは8株保有の株主になりますが、その他の少数株主は1株に満たない端株となり金銭処理されることになります。

 

つまりオーナー以外の株主がいなくなるということです。なお、株式併合を実施する場合には、株主総会の特別決議が必要となります。

 

◆「全部取得条項付種類株式」という方法も

ほかのスクイーズアウトに、「全部取得条項付種類株式」を利用する方法もあります。

 

全部取得条項付種類株式とは、一般的に発行される普通株式とは異なる種類株式の一種です。株主総会の特別決議を経れば、会社がそのすべてを強制的に買い上げられるという、特別な株式で、これを利用し、少数株主の株式を取得することで支配権を強化したり、会社経営にとって都合の悪い株主を排除したりすることができます。

 

 

中谷 健太
株式会社新経営サービス 経営支援部マネージャー
事業承継士/中小企業診断士/経営革新等認定支援機関

 

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※本連載は、中谷健太氏による著書『「子どもに会社をつがせたい」と思ったとき読む本』(あさ出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「子どもに会社をつがせたい」と思ったとき読む本

「子どもに会社をつがせたい」と思ったとき読む本

中谷 健太

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「子への承継」に軸足を置いた、中小企業の事業承継のための実務書。どの経営者にとっても、最大のミッションの一つである事業承継。 「できるなら子に継いでほしいが、承継意欲のない子をどうすればいいか」 「実績も見通…

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