※画像はイメージです/PIXTA

相続が発生した後、一般的には法定相続人全員で「誰がどのくらい遺産相続するのか」を決める遺産分割協議を行い、全員が合意した遺産分割方法をまとめた「遺産分割協議書」を作成します。しかし遺産分割協議書を作成しようと考えても、作成経験がある人は稀で、書式・様式・書き方など分からないもの。そこで作成までの流れが作り方を解説していきます。

遺産分割協議書の文例集…自分で作成する時の書き方

それでは実際に、遺産分割協議書をご自分で作成される際の具体的な書き方(作り方)を紹介します。【図表2】【図表3】は実際に使用している、遺産分割協議書のひな形サンプルを元に、具体的な文例集付きで解説します。

 

【図表2】遺産分割協議書のひな型サンプル_1
【図表3】遺産分割協議書のひな型サンプル_2

 

 

ここでみなさんが悩まれるのは、相続財産に関する内容の書き方かと思います。法定相続人の順番は通常は「年齢が上の人から順に記載」をし、相続財産は「不動産から記載」します。そしてプラスの財産に関する記載が終われば、次にマイナスの財産(借金等の債務)を記載します。これから、相続財産別に項目を分けて、詳しい書き方や注意点を解説します。

 

不動産(一戸建て)

【図表4】遺産協議書の書き方_不動産(一戸建て)の場合

 

不動産(一戸建て)については土地と建物に分けた上、登記簿謄本の記載事項と一言一句同じように書きます。お近くの法務局で登記簿謄本を取得し、以下の登記簿謄本の見本サンプルの、赤字部分の情報を転記しましょう。

 

【図表5】登記簿謄本の見本サンプル_1
【図表6】登記簿謄本の見本サンプル_2

 

 

なお、不動産の相続登記の際には、遺産分割協議書の提出が必須となります。不動産の登記簿謄本と遺産分割協議書に記載された不動産の記載に齟齬があると、最悪の場合は登記できない可能性もあるため、慎重に記載をしてください。

 

共有持分がある場合

【図表4】遺産協議書の書き方_共有部分がある場合

 

被相続人が土地の権利のうち「二分の一」を所有していたような場合、遺産分割協議書にもその旨を記載する必要があります。土地の所在・地番・地目・地積を記載し、最後に「持分」の表記を加えます。

 

不動産(マンション)

【図表8】遺産協議書の書き方_不動産(マンション)の場合

 

相続財産の中にマンションやアパートの1室がある場合、一戸建て不動産と同様に、以下の登記簿謄本の見本サンプルの、赤字部分の情報を記載します。ただしマンションやアパートの場合は、建物全体の記載をした後に「所有している専有部分」と「持分である敷地権」の記載をしなければならないため、一戸建てよりも表記が長くなります。

 

【図表9】登記簿謄本の見本サンプル_3

 

預貯金

【図表10】遺産協議書の書き方_預貯金の場合

 

預貯金については、金融機関名・支店名・種目(普通定期の種別)・口座番号・口座名義を特定できるように書く必要があります。この理由は、被相続人がA銀行の「東京支店」と「大阪支店」に口座を所有しているような場合、「A銀行の普通預金口座は長男が取得する」といった書き方をすると、東京支店なのか大阪支店なのかが判別できないためです。

 

有価証券

【図表11】遺産協議書の書き方_有価証券の場合

 

有価証券については、証券会社名・支店名・口座番号・口座名義・内訳(証券の種類・銘柄・数量)を全て記載する必要があります。詳細は証券会社からの通知などに全て記載されているため、参考にされると良いでしょう。ゴルフ会員権の場合は相続税申告上の取り扱いが異なるため、クラブに詳細を問い合わせてください。

 

自動車

【図表12】遺産協議書の書き方_自動車の場合

 

自動車については、車検証(自動車検査証)に記載されている、自動車登録番号・車台番号を記入する必要があります。ただし、査定金額が100万円以下の自動車の場合、簡易的な「遺産分割協議成立申立書」でも構いません。

 

債務や負債

【図表13】遺産協議書の書き方_債務や負債の場合

 

債務や負債については、契約内容・債務残高・債権者(会社名)を記載する必要があります。もし法定相続人の誰か1人が全ての債務を継承するのであれば、「相続人OOは被相続人の債務全てを継承する」と記載しましょう。

 

後日判明した財産について

【図表4】遺産協議書の書き方_後日判明した財産の場合

 

遺産分割協議の際に認識していなかった財産が見つかった場合に備えて、通常は上記の文例を遺産分割協議書の最後に記載します。サンプルには「改めて協議を行う」と記載しているため、追加の財産が出てきた場合には、追加の財産についてのみ、新たに遺産分割協議書を作成する必要があります。この他にも、遺産分割協議書に「すべて相続人OOが取得する」と記載しておく方法もあります。

 

「すべて相続人OOが取得する」と遺産分割協議書に記載した場合には、追加財産についての取得者が決まっているため、後日新たに財産が見つかっても、遺産分割協議を行う必要性はありません。

 

遺言と異なる遺産分割をする場合

【図表15】遺産協議書の書き方_遺言と異なる遺産分割をする場合

 

遺言書と異なる遺産分割をする場合、遺言書通りに分割しなかった理由を、遺産分割協議書の冒頭の法定相続人の名前の下の部分に記載します(赤色のマーク部分)。遺言書とは異なる遺産分割をする場合はいくつか注意点もあるため、「遺言と異なる遺産分割をするときの遺産分割協議書・登記・相続税はどうなるか」も併せてご覧ください。

 

代償分割を行う場合

代償分割とは、たとえば相続人が長男と次男で、3000万円の自宅と1000万円の預金の遺産がある場合に、長男が3000万円の自宅を相続する代わり(代償として)に1000万円を次男に支払うというような分割方法をいいます。代償分割を行うためには、遺産分割協議書にその旨を記載しなければいけないため、注意が必要です。記載する位置に決まりはありませんが、債務までの記載が終了した後ろあたりに記載するのが一般的です。

 

未成年者・障害や意思能力が乏しい人がいる場合

相続人の中に以下のような「単独では法律行為ができない人」がいる場合、家庭裁判所が選任した「特別代理人(成年後見人)」が代わりに遺産分割協議に参加します。

 

たとえば……

●未成年者

●精神上の障害がある人

●認知症などで判断能力が衰えている人

 

特別代理人が遺産分割協議に参加した場合、遺産分割協議書の「冒頭の一文」と「最後の署名押印欄」が通常とは異なる書式となります。遺産分割協議書の書き方としては、法定相続人の氏名の後に、特別代理人であることを明記して、特別代理人が署名捺印を行います。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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