(※写真はイメージです/PIXTA)

2024年は日本経済の上昇へ向けた転換点「ゴールデン・チェンジ」になると語るのは、国際エコノミストの今井 澂氏。「インバウンド」が上昇の起爆剤になる理由を、著書『日本経済大復活 ゴールデン・チェンジ』(Gakken)から抜粋してご紹介します。

今年の国際観光はパンデミック前の基準に達する見込み

視点を世界に広げてみましょう。国連世界観光機関(UNWTO)によれば、「観光は2020〜2022年の間、COVID-19(新型コロナウイルス)のパンデミックにより、観光史上最悪の危機を迎えた」といいます。

 

国際観光客到着数(一泊以上の訪問客)は、2019年の14億6500万人が2020年には一気に4億700万人となりました。世界的なロックダウン(都市封鎖)、渡航制限の広まりによる観光需要の低迷が影響して、わずか1年間で72%もの大幅減となってしまったのです。

 

世界中がパンデミックと戦い、ありとあらゆる規制がほとんど継続実施されたため、2021年の到着数はわずかに増加した程度で、依然として2019年の69%減の水準でした。その一方で、国内観光については各国の行動規制の緩和もあり、緩やかに回復しています。

 

続く2022年は、底堅い繰り越し需要と規制緩和によって、国際観光が部分的に回復してきます。到着者数は2021年比較で2倍以上に急拡大します。とはいえ、2019年に比べればなお34%低い水準でした。

 

2020〜2022年の3年間で、26億もの到着者数が消滅してしまったのです。この数字は、2019年の到着者数のほぼ2倍に相当します。

 

国際観光によるインバウンド消費は、訪問先のGDPでは輸出に計上されます。「観光輸出収入」、つまり国際観光による輸出収入も、コロナ禍の2020年に2019年比62%減、2021年に同59%減となりました。2022年には回復しましたが、2019年比ではやはり34%下回ったままです。

 

観光輸出収入の損失総額は、この3年間で2兆6,000億ドルに達しています。これは2019年に得られた収入の1.5倍です。

 

観光GDPで測定される観光の経済貢献は、2019年には世界全体のGDPの4%でしたが、パンデミックによって2020年と2021年に2%まで半減しました。2022年には2.5%(暫定値)まで戻してきましたが、3年間の損失総額は4兆2,000億ドルに達しています。

 

しかし、UNWTOが2023年9月26日に公表した資料「世界観光指標(World Tourism Barometer)」(2023年9月号)では、「国際観光はパンデミックによる打撃を迅速に乗り越えた」と宣言しています。

 

国際観光客到着数は2023年7月末までに、パンデミック前の水準の84%に達しました。2023年1〜7月の国際観光客到着数は7億人で、前2022年同期比で43%増となりました。尻上がりの復調で、UNWTOの見通しでは、 2024年の国際観光はパンデミック前の基準に達する見込みです。

 

2019年までの段階では、国際観光は世界経済を上回る成長を続けており、また多くの雇用を創出していました【図表2】。ポストコロナでもこのトレンドは継続しますので、日本のインバウンド拡大の強力な追い風となるのです。

 

出所:「観光白書」2020年
【図表2】外国人旅行者受入数ランキング(2019年) 出所:「観光白書」2020年
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