(※写真はイメージです/PIXTA)

長年慣れ親しんだ住まい。突然大家から「退去してほしい」と言われたら、どうすれば良いか大変戸惑うことでしょう。急いで次の住まいを探さなければならない。仕事をしながらだと、精神的にも肉体的にも辛くなります。急な出費も増えるため、家計が厳しくなることもあるでしょう。そこで、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、賃貸物件の退去宣言や立退料について、里村格弁護士に解説していただきました。

2.大家は立退料を支払ってくれるか

それでは、立退料とはどのような性質の金員なのでしょうか。正当の事由の判断にあたっては、大家側の立ち退きを求める理由・必要性と賃借人側の賃借を続ける理由・必要性や建物の利用状況や現況などが勘案されます。そして、大家側に正当の理由が足りない場合でも、それを埋め合わせるのが立退料なのです。よって、大家が立退料を支払うべきか否かは、それぞれのその建物の使用の必要性その他の事情にかかわってきます。

 

大家側の立退きの必要性の理由としてよく挙げられるのが、地震等の災害による建物の損傷や建物老朽化、耐震性の欠如です。建物の損傷によって、住んでいる方や近隣の方に損害を与えるような場合には、大家はそれに対する責任を負うわけですし、そのような場合には、喫緊に建物を取り壊して危険を除去する必要があると言えるため、大家側の立ち退きの必要性が重く見られることもあります。

 

ただし、建物損傷や建物老朽化は名目的な理由で、実際には、建物を建て替えて大家がより多くの収益を得たいという実質的な理由を有していることもあります。その場合でも、大家側の必要性が全く認められないわけでもありませんが、真に危険がある場合と比べるとその必要性は低くなってきます。

 

他方、賃借人側の必要性としては、長く住んできたことでその場所で生活の基盤を築いているということが基本的な理由となるでしょう。

 

ただし、土地柄、その物件でなくても他に探せば類似の物件が近隣に見つかるような場合は、相対的に賃借人側の必要性は低く見られるということになります。その場合でも、他の物件は賃料が高いであるとか、相応の引越料が負担であるとかといった事情もあろうかと思われますが、その場合には、金銭的に解決する、つまり相当額の立退料が支払われることによって調整されることとなります。

 

以上、立退料を支払ってくれるか、その額がいくらであるべきか、というのはケースバイケースというほかなく、確たる目安があるわけではありません。立退料の「相場」が家賃6ヵ月分という話がまことしやかになされますが、実際には、大家と賃借人の必要性を比べるわけで、それぞれの事情は千差万別ですから、6ヵ月分の立退料の提示があったとて応じる必要性があるとは必ずしも言えません。仮にそのような提示がなされた場合でも、DTPさんの方でよく検討されるとよいでしょう。

3.大家が立退料を支払ってくれない場合

以上を踏まえて、大家側が立退料の提示をして、双方で交渉ができればよいですが、そういかない場合も多々あります。

 

大家側が、納得できる立退料を提示しない場合、賃借人としては、立退きに応じず、そのまま賃借を続けることになります。大家が賃料の受領を拒絶する場合もありますが、その場合は、そのまま賃料を支払わないと、大家側から賃料不払いを理由に明け渡しを求められることもありえますので、法務局で供託という手続を取る必要があるかもしれません。

 

大家側から、立退料の支払いと引き換えに建物を明け渡せ、という民事訴訟が提起されるかもしれません。その場合には、訴訟の場で、大家側の立退きを求める理由・必要性と、賃借人側の賃借・使用することの必要性、立退料の額が審理されることになります。

 

大家との協議が奏功しない場合には、次の段階に移ることが見込まれますので、その前に一度弁護士に相談されることをお勧めします。

大家側と賃借人側の目線

1.大家側の目線

以上の通り、法律上、大家の意向が無条件で通るようにはなっておりません。にもかかわらず、大家が強気の主張をして、感情的にこじれる事情は多々あります。

 

大家側としては、上記の定めを正しく理解して、自分の目標である立退きをどのように実現するか、当初から弁護士に相談していただくのがよいと思います。賃貸アパートでよくあるのが、無思慮に全住人に立退きを求めるも、一部は任意で立退き、残りは徹底抗戦という構えに陥るというパターンです。そうなった場合に、空いた部屋に新しい住人を入れるわけにもいかず、賃料収入が減った状況で、残りの住人と立退き交渉を進めることになってしまいます。

2.賃借人側の目線

賃借人側としても、あまり物件がない地域であれば別ですが、実際に問題となるのは、周辺に探せば別物件がある場合が多いと感じます。そのような場合には、徹底的に争っても、結局は立退料の支払いをもって明け渡しを余儀なくされることもあります。

 

いずれにせよ、状況を正しく見極めて、どのように解決に至るかを検討することは必須です。

 

 

里村 格

弁護士

 

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