(※写真はイメージです/PIXTA)

新年度に向けて、「経営計画」を考えているという企業は多いと思います。しかし、社員にとって経営計画が他人事となってしまっている企業も少なくないのではないでしょうか。本稿では、社員数50名の新聞販売店を23年間経営し、多くの企業の経営支援に携わってきた米澤晋也氏が、社員が経営計画に関心を持ち自分事にするための実務を、実例等を交えて詳しく解説します。

 

ビジョンの解像度は“実在する3人の登場”で高まる

ビジョンが「未来の“その日”が動画で再生される」ということであるならば、「動き」がなければ成り立ちません。動くものとはなんでしょうか? 風に揺らめく木々の葉でも良いのですが、やはり「人間」の登場が欠かせないと思います。しかも、どこの誰だか分からない人ではなく、実在する人の方が感情移入できます。

 

そこで、私は、次の人物が経営計画書に登場するように提案しています。

 

1.顧客

 

2.自分

 

3.仲間

 

■顧客

 

経営は、顧客に喜ばれ支持されることで成り立ちますので、顧客の成功イメージは欠かすことができない要件です。顧客は、「この人に喜んでもらいたい」と心から思える「実在する人」が条件です。既存客でなくてもよく、家族でも友人でもOKです。

 

社員1人1人が、「自分はこの人」と個別に設定することも有効です。実在する人を挙げることで、自社の対象顧客が明確になるとともに、顧客に喜ばれるイメージにリアリティが生まれます。事業定義が、言葉での説明では得られない生命力を帯びるのです。

 

■自分

 

私が提唱する「指示ゼロ経営」には、「望みの統合」という重要な概念があります。社長が望むことをいくら熱弁したところで、それを社員が望まない、あるいは無関心、つまり「望みの分離」が起きていたら自発性は期待できません。

 

望まない人を動かすためにはアメとムチ、指示命令によるコントロールが必要になります。しかし、他者によるコントロールでは、真の自発性も創造性も発動しません。

 

「望みの統合」を起こすためには、経営計画書に、社長を含む全員の、会社の成功の暁に実現する「個人のビジョン」を描くことが欠かせません。「新車を買った」とか「家族で旅行をした」といったプライベートなことでOKです。

 

社員全員分を経営計画書には盛り込めないと思いますので「別冊」のような形でまとめることをおすすめします。

 

■仲間

 

仲間のビジョン……夢を知ることで、互いに対する共感が生まれます。チーム内に不毛な競争があれば話は別ですが、そうでなければ「1人1人の夢を実現する最も有効な方法は共創・協働である」という機運ができ、上質なチームワークが形成されます。

 

当社では、毎年、社員のビジョンを「別冊」にまとめ、全社員に配布してきましたが、みんな仲間のページを興味深く読んでいました。

 

米澤晋也氏が代表を務める会社で実際に配布されている、社員のビジョンをまとめた「別冊」
米澤晋也氏が代表を務める会社で実際に配布されている、社員のビジョンをまとめた「別冊」

 

このように、3人の登場人物のイメージをゴールに、そこまでの道のり……「方法」を埋め込むことで物語になります。数値的な成果は、物語による産物という位置づけとして計画されます。

 

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