(写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資にはまとまった資金が必要で、多くの場合、投資家はそれをローンによって調達します。融資を活用することで自己資金の何倍もの金額を動かせるため、レバレッジを効かせた効率的な投資が可能になります。ただ、マイホームを購入する際に利用する住宅ローンとは異なり、不動産投資向けのローン審査では、購入物件の収益性が重要ポイントとなります。本稿では、ローンの審査において金融機関の融資担当者が具体的にどのような点を重要視しているのかについて解説します。

金融機関は融資の審査で何をチェックしているのか?

住宅ローンの場合、その審査において重視されるのは借り手の信用力・返済能力です。

 

返済の原資となるのは借り手の所得ですから、その人の「属性(職業、年収などの社会的・経済的背景)」が決め手となります。

 

具体的には、年齢や勤務先、勤続年数、勤務先の規模、年収、保有資産、現在の住まいの居住年数、配偶者の有無などを細かく確認し、きちんと返済し続けられるかどうかが吟味されます。

 

不動産投資ローンは、住宅ローン以上に審査が厳しいといわれています。

 

借り手の「属性」もさることながら、物件の収益性や担保としての価値がシビアに見定められるためです。物件の収益性においては、利回りの水準とともに空室リスクがとくにチェックされるポイントだといえそうです。

 

安定的な賃貸需要を見込める人気エリアに位置し、最寄り駅からも近くて商業施設なども充実していれば、空室リスクは低いと判断されます。しかも、築浅の物件なら当面はリフォーム費用も発生せず、安定的な利回りを期待できます。

 

無論、そういった好条件の物件は価格も相対的に高いケースが大半で、おのずと利回りは低めになってきます。

 

ただ、近隣の相場よりも割安な価格で取得できる不整形地を巧みに開発するなど、工夫を凝らして開発コストを抑えている物件は近隣の競合よりも利回りも高めになり、売却する際にも高い評価を受けやすいものです。

 

ところで、金融機関は返済が滞った場合にその物件を差し押さえて競売などにかけ、売却代金から債権(融資した資金)を回収するため、投資対象の賃貸物件に「抵当権」を設定するのですが、当然ながら、担保価値が高いほど債権を回収しやすくなるため、審査においてもその点が注視されます。

 

安定的な賃貸需要が見込まれる収益性が高い物件は、おのずと担保としての評価も高くなるものです。

 

物件の耐用年数も、金融機関がしっかりとチェックしているポイントです。

 

法定耐用年数はRC造が47年、重量鉄骨が34年、木造物が22年と定められており、それぞれ所定の年数が経過すると建物部分は無価値とみなされることから、金融機関によっては融資を受けられないケースも出てきます。

 

不動産投資ローンでも、年収や保有資産などといった個人の「属性」はチェックされています。当然ながら、大手企業に勤務していたり、それなりの資産を築いていたりする人は有利になります。

 

また、すでにアパート経営の経験があり、安定的なキャッシュフローが得られている場合も、審査において高く評価されます。

円滑に融資を受けるため、投資家が事前に進めておくべき準備とは?

円滑に審査を進めてもらうためにも、投資検討中の物件に関する詳細な情報や保有資産の状況について記載した目録などの書類はきちんと準備した上で、融資の申込みを行うのが鉄則です。

 

また、審査の際に難色を示されがちなポイントを把握し、事前対策を講じておくことも重要です。

 

一部の銀行で過剰な貸し出しが繰り広げられていたことが問題視され、最近は頭金ゼロで投資費用の全額を融資で賄う「フルローン」が難しくなっています。

 

少なくとも、購入に必要な資金の1〜3割程度に当たる頭金は工面しておくのが無難でしょう。

 

頭金が不足している人は、自宅などの投資物件以外の所有不動産を担保に充てて融資を引き出すのも一考です。

 

資金面に不安がない人は、十分な頭金を用意するとともに、預貯金にもそれなりの資金をプールしておくといいでしょう。手元のキャッシュが潤沢であることは、審査において高く評価されるポイントとなります。

 

空室の長期化などで期待通りの賃料収入が得られなかったり、大掛かりな修繕費用が発生したりした場合も、自己資金に余裕がある人なら返済に窮する恐れが少ないと判断されるためです。

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※本記事は、「不動産業界から『あなた』を守ります」をコンセプトに株式会社LandSitzが運営する『不動産投資の裏側を知る教科書』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。