「左脳型」から「右脳型」キャリアへの転換※3
個々のキャリア形成支援によって、いままでのキャリアの見直しができれば、自分の強みや弱みの把握につながります。一方で、後悔のない人生を送るためには、変化の激しい社会のニーズに振り回されすぎず、自分起点の人生を歩むことが大切であると感じます。
キャリア論の研究者であるジェラット(Harry B. Gelatt)は、変化の激しい労働市場を背景に、「個人の客観性と出来事の予測性についてのいくつかの仮定が、より幅広く、より不確実な見解に置き換えられるべきである」と述べ、「積極的不確実性(positive uncertainty)」という概念を提唱しています ※4。
世の中の不確かさを積極的に受け入れて意思決定をしていくためには、合理的な選択ではなく(左脳型)、主観的で直感的な選択(右脳型)も必要であるということを示しているのです。そのためには、想像力や直観力、柔軟性が必要だとされています。
たとえば、今後のキャリアに関する情報をきちんと収集するだけではなく、その情報をどう意味付けするのか、というのは、人それぞれですので、個人の直感に頼る部分が大きいといえます。
ジェラットが2001年に行った日本の講演では、「左脳ばかりを使うのではなく、右脳も使う意思決定」、「夢見ることを大切にする意思決定」※5が紹介されたそうです。最近では、アート思考やデザイン思考のプログラムが出てきていますが、右脳を使う意思決定は、キャリアの選択だけではなく、仕事のなかでも必要とされる時代がきたと感じます。
定年を考えるようになったタイミングで、見えないなにかに縛られて生きてきたことに気づくのであれば、改めて自分の感性や、直感、妄想といった不確実なものに、もう一度目を向けることで、新たに見えてくるものもあるのではないでしょうか。
※1 「キャリアコンサルティング理論と実践 5訂版」木村周 一般社団法人雇用問題研究会
※2 「キャリアコンサルティングの実態、効果および潜在的ニーズ」(平成29年3月)(労働政策研究・研修機構)
※3 「女性と定年」(金融財政事情研究会・小島明子著)
※4 渡辺美枝子編著(2007)「新版 キャリアの心理学」第2版 ナカニシヤ出版
※5 渡辺美枝子編著(2007)「新版 キャリアの心理学」第2版 ナカニシヤ出版
小島 明子
日本総合研究所創発戦略センター
スペシャリスト
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