国も推奨する「薬の飲み合わせトラブルを減らせる方法」が全然浸透しないワケ

国も推奨する「薬の飲み合わせトラブルを減らせる方法」が全然浸透しないワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

『かかりつけ薬剤師』という制度をご存じでしょうか。2016年4月の調剤報酬改定によって始まったこの制度は、患者自らが自分を担当する薬剤師を指名することで、指名を受けた薬剤師から特定のサービスを受けられるようになりました。しかしながら当制度は、普及が進んでいないのが実情です。メリットも多いはずなのに、なぜ普及しないのか。本記事では、かかりつけ薬剤師のメリットと課題について詳しく解説します。

かかりつけ薬剤師はなぜ普及しない?

患者にとって健康上のメリットが大きいはずのかかりつけ薬剤師の制度ですが、残念ながら2016年のスタート時から現在に至るまで、認知度や利用度はさほど高まっていないのが現状です。

 

2022年7月に健康保険組合連合会が実施した「医療・介護に関する国民意識調査」によると、かかりつけ薬剤師を「知っており、利用したことがある」と答えた人は全体の7.8%であり、2017年の調査結果(7.8%)と比べると横ばいの状態です。

 

かかりつけ薬剤師の普及が進まない原因はいくつかあります。

 

患者側:メリットがわからない

まず、患者にとって「メリットがわからない」というものです。2020年に内閣府が行った「薬局の利用に関する世論調査」によると、かかりつけ薬剤師を決めていない理由のうち、最も多かったのが「かかりつけ薬剤師を決める利点がわからない」であり、全体の24.6%でした。次いで「かかりつけにしたい薬剤師が見つからない」と答えた人が22.1%、「必要性を感じない」と答えた人が20.4%でした。

 

これらの結果から考えるに、先ほどご紹介したような、かかりつけ薬剤師のメリットが広く知られていないことに課題がありそうです。

 

患者側:ひとつの薬局だけに通っていない

また、同じ世論調査における「​​薬局をひとつに決めていない理由」にも注目してみましょう。「病院や診療所ごとにその近くにある薬局を利用するほうが都合がよいため」を理由に挙げた人が74.0%と最多で、薬局の再編が道半ばであることがうかがえます。

 

薬剤師側:かかりつけになっても見合う報酬をもらえない

では、「かかりつけにしたい薬剤師が見つからない」と患者がみなしている現状について、薬局側から考えてみましょう。なぜかかりつけ薬剤師が増えないのでしょうか。

 

簡単にいうと「成果に対して報酬が割に合わない」のです。薬局が抱える事情は、診療報酬改定に関する会議資料から読み取れます。厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が2023年11月に公開した資料によると、かかりつけ薬剤師が提供する各サービスに対して、診療報酬の加算点数が見合っていないことが指摘されてます。

 

先述したとおり、かかりつけ薬剤師が提供するサービスは多岐にわたります。にもかかわらず報酬が望めないのであれば、従来からの門前薬局としての機能や報酬を捨ててまで、かかりつけ薬剤師を増やすような経営判断は下しにくいのでしょう。

 

また、24時間対応で患者からの相談を受け付ける体制を作ることが難しい点も資料で言及されています。

 

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