(※写真はイメージです/PIXTA)

非課税期間が恒久化した「新NISA」では、配当の高い個別株に投資し、非課税で配当をもらい続ける手法も可能に。しかし、「配当重視の手法での銘柄選びには注意点もある」と、証券アナリスト(CMA)資格も持つ日本経済新聞編集委員、田村正之氏はいいます。田村氏の著書『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』より、新NISAで高配当銘柄戦略を遂行するために注意すべきポイントをみていきましょう。

「累進配当」の公約があると安心

会社としての意思表明も重要です。例えば住友商事は、年間配当額を、自己資本に占める株主資本配当率(DOE)で「3.5~4.5%の範囲内で、配当性向30%を目安に決定する」と表明しています。

 

三菱商事も「中期経営戦略2021」で「持続的な利益成長に合わせて増配していく『累進配当』を継続」する方針を示しています。

 

三井住友フィナンシャルグループも減配をせず配当を増やす累進配当施策を推進中です。

 

配当性向を公約する企業も多くありますが、配当性向は変動率の大きい利益に左右される可能性があるので、累進配当の公約の方が安心かもしれません。

 

こうした条件を満たしているとしても、割高な局面で買ってしまえば配当利回りもその分下がりますし、株価の下落リスクも高まります。PERや株価純資産倍率(PBR)など様々な株価指標をみて、できるだけ割安な局面での購入を考えるべきです。

 

高配当銘柄戦略を成功させるために大切なこと

ただPERやPBRの適正水準は企業ごとに異なります。過去のPERやPBRがどれくらいのレンジで動いているかから判断し、できれば底値圏で買いたいものです。「バフェット・コード」というサイトでは、過去3年間のPERやPBRの推移をみることができます。

 

高配当銘柄戦略を成功させるには、このように業績や株価指標などをきちんと定期的に吟味する手間をかけ続けるという覚悟も大切です。

 

ちなみにここで紹介してきたような情報を幅広く調べられるのがマネックス証券。口座を開設したうえで(無料)、サイトの「銘柄スカウター」というツールで会社名を入力して「株価指標」という項目をクリックすると、過去5年程度のPERの推移がグラフで表示され、現在がどの程度の水準なのかわかります。

 

出所:『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(日経BP)より抜粋
[図表1]高配当銘柄戦略を成功させるには 出所:『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(日経BP)より抜粋

 

また過去10年程度の業績や配当の推移、理論株価もわかります。過去5年ほどの各年の業績修正の結果もみられるので、最初に高めの業績予想を出す癖がある会社かどうかもわかります。「無料でここまで調べられるのか」とうれしくなる機能です。

高配当銘柄には株価が長期的に伸び悩むケースが多い

もう一度確認すべきは、投資の総合収益(トータルリターン)は「配当+株価の変化率」であること。配当を出した分だけ残る資産は少なくなり株価は下がります。

 

個別株の決算で配当の権利落ち日には通常、その分だけ株価が下がることを思い出してください。高配当銘柄には株価が長期的に伸び悩むケースが多いのはそのためです。

 

「たくさん取り崩せば残る資産がそれだけ減る」という意味では、インデックス型投信を自分で多く取り崩すと残る資産が大きく減るのと原理的には変わりありません。

 

高配当銘柄を集めた例

高配当銘柄を好む人たちの多くは「高配当の分だけ株価が大きく下がっている(または伸び悩んでいる)」という意識が希薄な気がします。

 

例えば米国で高配当銘柄を集めた「米国高配当株式ETF(VYM)」をみてみましょう。

 

ちなみにETFは上場している投資信託のことで、少額のお金でたくさんの銘柄に分散投資できます。保有コストである信託報酬が非上場の投信より低いことが多く、上場しているため通常の株式のように機動的な売買も可能な投信です。

 

VYMは配当の高い金融、ヘルスケアセクターなどの組み入れが多いのが特徴です。米国株式市場の配当利回りが1%台であるのに対し年3%程度の分配金を出し続けていて、個人投資家にも人気があります。

 

このVYMの価格を、米国株全体を表すS&P500種株価指数で割り算した数値の推移が[図表2]。

 

割り算なので、VYMが米国株全体より好調な時期は値が上がります。しかしグラフからは、長期では割り算の結果は低下傾向であり、米国株市場全体には負ける傾向がみられます。配当を出さないことが多い成長企業であるGAFAMなど、情報セクターの組み入れが低いことが背景です。

 

出所:『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(日経BP)より抜粋
[図表2]バンガード・米国高配当株式ETF(VYM)÷S&P500株価指数 出所:『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(日経BP)より抜粋

 

実は配当重視の投資をしている日本の個人投資家にも、配当はたくさん得られてもトータルリターンではさえない結果になっているケースが多くみられます。配当利回りは高いものの成長性の低い銘柄が多い業種や銘柄に保有が偏ったり、業績悪化で株価が低迷しているために配当利回りが高くなっている銘柄を選んでしまったりしているからです。

 

 

田村 正之

日本経済新聞社

編集委員

 

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※本連載は、田村正之氏による著書『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

間違いだらけの新NISA・イデコ活用術

間違いだらけの新NISA・イデコ活用術

田村 正之

日経BP 日本経済新聞出版

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