(※写真はイメージです/PIXTA)

映画『マルサの女』で有名になった国税局査察部(通称マルサ)。特定の税務署に設置される「特別調査部門(トクチョウ班)」はその登竜門ですが、トクチョウ班は案内板にも職員録にも記載されない“シークレット部隊”だと、元マルサで税理士兼住職の上田二郎氏はいいます。上田氏が「トクチョウ班」統括官時代、実際に担当した「脱税事件」を紹介します。

「架空人件費問題」の真相は解明できず…

しかし、長男の脱税は“さらなる追及”へ

本件調査の着手日、筆者はトクチョウ班のメンバーに命じ、先述の“怪しい退職”をしていた2人の女性に対して無予告の「反面調査」を行った。

※ 反面調査……税務調査の対象となる本人ではなく、取引先などといった関係先に対して行われる調査のこと。

 

しかし当日、60歳で退職した女性は温泉旅行に行っていて不在。もう1人の30代女性も不在だったため、無予告調査は空振りに終わる。

 

1度空振りしてしまうと、口裏を合わされてしまいその後の調査はうまくいかない。結局、30代女性に対する架空給与の証拠は見つけることができなかった(もちろん筆者の読みが外れていて、実際に勤務していた可能性もあるが)。

 

数週間後、筆者は税理士を税務署に呼び出した。税理士は開口一番「大変ご迷惑をおかけしました」と深々と頭を下げた。再度、30代女性の給与について追及するが、架空給与を認めるわけはない。

 

決め手がない以上、否認することはできない。仮に否認しても給与に対する源泉徴収税額を還付しなければならず、かかる調査日数と追徴税額を天秤にかけ、調査を断念した。

 

筆者が「納得はしていませんが、これ以上の追及をやめます。ただし、事務所が負担した長男の中小企業退職共済掛金は、経費としての計上を認めません」と伝えると、税理士は「ありがとうございます」と言って、再び深々と頭を下げた。

 

国税の調査はこれで終了したが、問題は長男の住民税だった。過去10年間にわたり、800万円の給与を400万円に偽って脱税している。もちろん税理士の名前で源泉徴収票が発行されていた。

 

税理士「本当に申し訳ありません。監督不行き届きです」

筆者「監督不行き届きではなく、先生自身の確定申告の問題です。知らなかったで済む問題ではありません」

税理士「……どんな処分になるのでしょう?」

筆者「事実を市役所に通報します。後日、追徴額の通知がくると思います」

 

これだけの問題が見つかると税務調査だけでは終わらない。「ご存じでしょうが、調査経過は署の幹部に報告済みです。もちろん、国税局への報告になるでしょう。統括官レベルで対応できる問題ではありません」と伝えた。

 

 

上田 二郎

元国税査察官/税理士

 

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