返済額が少ない「長期ローン」に隠された“落とし穴”
「定年退職後の年金として、不動産投資を始めませんか?」というのも区分マンション販売業者がよく使うセールストークのひとつです。
少し前に「老後2,000万円不足問題」が取りざたされましたが、定年退職後や老後の資金面での不安をあおり、たいして儲からない区分マンションを販売する手法です。
ローン期間も最長40年などの長期間にわたり、返済期間を引き延ばすことによって、現在の毎年の返済額を低く見せかける悪しき販売方法です。
長期ローンになると、それだけ建物は老朽化していきます。40年後に借金を無事に完済し終わったとして、その建物にはどれほどの価値があるのでしょうか?
当然ながら古くなった設備を入れ替えたり、傷んだ個所を修繕したりするためのコストも発生するでしょう。
「区分マンションなら毎月積み立てる“修繕積立金”があり、老朽化した個所の修繕はその積立金から拠出すればよいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、修繕積立金は、共用部の修繕に使用されるお金であり、あなたが取得した区分の室内を修繕することはできません。
取得した時点から常に黒字で運営できる物件を選ぶ
もちろん一棟物件であっても、この「古くなると修繕費がかかる」という点では、まったく同じです。
しかし、概して一棟物件のほうが収益性も高く、手に残る利益の額は一棟もののほうが多くなります。そのため、積みあがった利益、キャッシュフローの中から修繕費を負担することができます。
投資では、時間を味方につけるのが常識ですが、区分マンション投資のように儲からない不動産投資では長期運用が仇となり、つまり時間が敵になることもあるのです。
とくに不動産は、金融商品とは異なり現物の資産ですので、時間の経過とともに老朽化していくリスクは避けて通れません。
したがって、区分マンションに限らず「儲からない物件は買わない」という選択が大切です。
不動産投資は事業であり、将来に得られるかどうか定かではないキャピタルゲイン(売却)に期待するよりも、取得した時点から常に黒字で運営できる物件を選びましょう。不動産投資は「小さく生んで大きく育てる」のがコツなのです。
名取 幸二
株式会社ペスカトーレ
代表取締役
杉田 卓哉
一般社団法人マネー総合研究所
所長
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