「節税」というキーワードは要注意
「不動産投資は節税対策になる」というフレーズも、区分マンションの販売業者がよく使うセールストークです。年収の高いサラリーマンなどに対して、「赤字にすることにより、所得税を節税しましょうよ!」などと誘ってきます。
これは本業の収入と不動産投資での赤字を相殺させて所得税の減税を図る方法で、「節税目当てだから」と、あえて赤字になるような儲からない不動産をあなたに売りつける悪質な不動産営業マンがいます。
不動産投資は不動産賃貸業という事業ですから、赤字経営はよくありません。先ほどの事例にあった「月々たった1万円の支払い」は、言い換えれば「毎月1万円のマイナスキャッシュフローである」という意味合いです。
目先の節税より、事業を黒字化して金融機関の信用を獲得するほうが得策
赤字経営を続けるなかで、空室になれば月マイナス1万円が月マイナス11万円になり、さらに修繕費がかかることもあります。いくら節税になるからとはいえ、マイナスの投資をする意味はありません。ましてや銀行から融資を受けての事業なので、赤字になると次から追加融資が受けられなくなります。
それでも「属性」という、その人の年収・資産背景・社会的地位などにより、銀行もその赤字を一定額までは許容して追加融資をしてくれるのですが、債務超過が属性によるプラス評価で埋め合わせられなくなると、そこで融資は完全にストップします。
もちろん、理論上では所得税を低く節税することは可能になりますが、不動産を「事業」として見た場合には赤字経営になるので本末転倒です。一度でも、この「赤字にして所得税を節税」という路線を歩んでしまうと、その後に黒字化して利益を大きくしていきたい路線に変更するのは至難の業です。
不動産経営はあくまでも収益を得ることが目的であり、融資を受けて規模をさらに大きく拡大していきたいのであれば、目先の節税ではなく、事業を黒字で継続して、金融機関からの信用を獲得するほうが得策です。
そういう意味でも、不動産投資は赤字で運営すべきではありません。日ごろから「税金が高いなあ……」と悩んでいる高給取りのサラリーマンにとって、この「節税」というキーワードは一見すると魅力的に感じます。
しかし、それは落とし穴です。彼らの口車に乗ってはいけません。
名取 幸二
株式会社ペスカトーレ
代表取締役
杉田 卓哉
一般社団法人マネー総合研究所
所長
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