世界的な一流投資家たちは、みなそれぞれ独自の信念と哲学を有している──。本連載は、金融ジャーナリストであるウィリアム・グリーン氏の著書『一流投資家が人生で一番大切にしていること』(早川書房)より一部抜粋して紹介し、一流の投資家たちの成功哲学を探ります。今回は、グリーン氏が、ひとりの人間が運営するアクティブファンドとしてはアメリカ最大となる、約1,180億米ドルの資産をもつ巨大ファンドを作り上げたウィル・ダノフ氏にインタビューした際のエピソードを、抜粋して紹介します。
投資プロセスはシンプルに
ダノフは初対面のシュルツをそれほど高く評価しなかったという。だが最終的にスターバックスは、ダノフのコントラファンドがとくに多くの株式を保有する企業となる。突出した成長率を維持している優れた企業に長期で投資することがいかに有効な戦略であるか、スターバックスは見事な事例となった。
20年にわたり同社が達成してきためざましい業績の図をダノフは示す。この間、EPS(一株あたり利益)は年27.45%増加し、株価は年21.32%上昇していた。同時期、S&P500の利益の伸びは年8.4%、株価は年7.9%の伸びにとどまっている。
利益と株価の推移を追った2本の線に指を走らせながら、これで何がわかるかなと私に問いかける。私は「株価は結局、利益を追いかけているようだ」と答える。彼はうれしそうに目をくりくりさせる。
「まさしく! ビンゴ! それこそ私が学んできたことだ。株価は利益を追いかける!」
ダノフの主張はたいして奥深くは聞こえないだろう。だが彼の強みの一端は、複雑すぎるものを受けいれないところにある。傑出した洞察力をもつ投資家として名高く、彼の友人でもあるビル・ミラーによると、ダノフは、ささいなことに惑わされることなく、いちばん重要な問題に意識して集中するのだという。
「ウィル(ダノフ)は以前、謙遜してこう言っていた。『自分はそれほど賢くないし、世のなかには情報が多すぎる。だからある企業を目にしたら、これだけを考える──“よくなっているか、悪くなっているか”って。もし、よくなっているのなら、何が起こっているかを知りたい』 」
ミラーも、投資プロセスをシンプルにすることを学んできた。「以前の投資行動から不必要な部分を除こうとしている」 。たとえば、かつては、分析対象となる企業の細かいところまで把握するために、緻密な財務モデルをつくっていた。「いまはもうモデルづくりはしない。意味がないし、むだだとわかったから」 。代わりに、その企業に影響を与えそうな3、4個の重要な問題に集中して考える。
「どの企業にも、キーとなる変数がいくつかある。それ以外はノイズ」思考パターンは明らかだ。グリーンブラット、バフェット、ボーグル、ダノフ、ミラーはみな、それぞれの方法でシンプルさを追求してきた。私たちも続くべきだと思う。
貫性があり、長期にわたって機能する投資戦略だ。内容を理解し、いいときだけでなく悪いときも忠実に守っていけるほど強く信じられる戦略をそれぞれがもつべきなのだ。重要なポイントなので、あとでまた触れることにする。
金融ジャーナリスト
ウィリアム・グリーン
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