「賃上げ」で企業が潰れても…日本経済全体には「プラスの影響もある」といえるワケ【元IMFエコノミストが解説】

「賃上げ」で企業が潰れても…日本経済全体には「プラスの影響もある」といえるワケ【元IMFエコノミストが解説】
※画像はイメージです/PIXTA

従業員からの賃上げ要求で、物価高物価上昇や人手不足から企業は賃金を上げていますが、その帰結はなんでしょうか。本記事では、元IMF(国際通貨基金)エコノミストで東京都立大学経済経営学部教授の宮本弘曉氏による著書『一人負けニッポンの勝機 世界インフレと日本の未来』(ウェッジ社)から、賃上げによる日本経済への影響について解説します。

賃上げによるリスク

ここまで見てきたように、物価上昇や人手不足から企業は賃金を上げていますが、その帰結はなんでしょうか。

 

企業は、賃金上昇でコストが増加し、収益が増えない場合には賃上げ分を吸収できず、存続が厳しくなります。特に、中小企業や業績が振るわない企業は、経営が圧迫されるリスクが高まります。

 

一方、これが経済全体にとって問題かというと必ずしもそうではありません。経済の新陳代謝が進むからです。賃上げができない、あるいは賃上げをすることにより存続ができなくなるような生産性の低い企業が市場から撤退することで、経済全体の生産性が高まり、経済の成長が促される可能性があります。

 

問題は、この経済の新陳代謝が円滑に行われるかどうかです。勤め先の企業が存続できなくても、従業員が他の企業に高い賃金や好待遇で移動できれば、一時的に失業することがあったとしても、それは労働者にとって必ずしも悪い結果とはなりません。

 

しかし、労働市場の柔軟性が十分でない場合や、新たな雇用創出が遅れる場合は、失業者が増え、経済全体にマイナスの影響を与える可能性があります。

 

そこで、求められることは、労働市場の柔軟性を確保し、雇用機会を増やすことです。なお、企業が労働生産性を向上させる取り組みを行い、賃金上昇に伴うコスト増を吸収できるように努めることは言うまでもありません。

 

 

宮本 弘曉

東京都立大学経済経営学部

教授

 

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一人負けニッポンの勝機

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宮本 弘曉

ウェッジ社

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