部長の手取りは平均で「約48万円」
それでは出世して「部長」になるとどうなるのか? 同調査によると、部長職の平均給与(所定内給与額)は58万6,200円(平均年齢52.7歳、平均勤続年数22.1年)であった。手取りにすると約48万円で、課長職より8万円ほど高い。
この上乗せ分をそのまま貯蓄にまわせるかというと、難しい実情がある。というのも、課長から部長に昇進し、給与も額面では10万円以上増えたとき、生活レベルを維持したまま暮らし続けることができるだろうか。
「もっと良いところへ住もう」「もっと良い服を着よう」「ちょっと贅沢したものを食べよう」「子どもの習いごとをひとつ増やそう」……昇給に伴い、こうした欲望が喚起されていくのはよくあることだ。とくに自身では自分の財務状況を理解していても、パートナーに提案され押し切られることも多いだろう。
しかし状況を振り返れば、余剰金を貯蓄分にまわすことで「ようやく必要分に足りるレベル」であったわけなので、給与が増えたからと贅沢が許されるようになるわけではない。
なんとも悲惨な話だが、これはあくまで1人の世代で見たときの話だ。「カツカツに節約して出世して、ようやく安心レベル……」、そんな悲惨な目にはあわないケースも少なくない。「親が金持ち」である人たちだ。
国税庁の調査「相続税の申告状況(令和3年度分)」によると、相続税の課税割合はおよそ9.3%だった。「税制改正によってお金持ちではない人にも相続税がかかるようになった」とは言われるが、それでも相続税の基礎控除額は(3,000万円+600×法定相続人の数)であるから、相続税が課されるような人はやはりお金持ちであるといえる。
とはいえ、相続財産は「現金」ではなく「土地」などの不動産であることも多いが、これが「一見、いらない実家」であったとしても、「親が何も持っていない」人たちからみれば大きな財産である。
例えば、実家を売って税金を払って手元に300万円しか残らなかったとしても、貯蓄にプラスすれば大きな額だ。「実家があるならば売らずに住めばよいのではないか」という話になれば、家賃分もしくは住宅購入分、数千万円以上のさらに大きな金額がプラスとなる。