(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の病気として代表的な「がん」。日本で根強く残る「不治の病」というイメージから、治療中に精神的に不安定になる人は少なくありません。なかには、がんへの恐怖から科学的根拠のない高額民間療法へ散財してしまう人もいると、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏はいいます。本記事では、がん患者の平田正二さん(仮名)の事例とともに、がん治療をめぐる問題について解説します。

増える熟年離婚と老後破産のリスク

以前と比べると熟年離婚という言葉を耳にする機会が増えたように思います。実際、厚生労働省の人口動態統計によると2020年に離婚した夫婦のうち、20年以上同居したいわゆる「熟年離婚」の割合が21.5%と過去最高になっています。

 

もちろん離婚の原因はその夫婦それぞれの事情によるものなので、それを避けるべきかどうかは一概にいえませんが、ひとついえることは熟年離婚をした場合には経済的にかなり厳しくなる可能性があるということです。

 

以下でその理由と、今回の事例における離婚の引き金となったものについて見ていきたいと思います。

 

夫婦の財産は共有の財産

今回の事例の平田さんは自宅や預貯金は自分名義で所有権はすべて自分にあるため、離婚により財産を分割して妻に渡す必要があるとは思っていませんでした。そして何より年金収入まで分割対象ということに大きな驚きを感じました。

 

離婚時に財産を分けることを一般的に財産分与といわれていますが、これは結婚後に築かれた財産が対象となります。夫婦共有での財産と実質的な共有財産(名義は夫であるが実質的には婚姻中夫婦の協力によって形成された財産)で、具体的には現金預金や不動産などが代表例です。

 

そして2007年4月からは、婚姻期間中の年金保険料納付実績が年金分割の対象となる「年金分割制度」も始まりました。こういった理由で、離婚をすることにより財産が半分になりさらに年金収入も下がってしまいます。

 

そして住宅ローンを完済し、家賃がなかった状態から、賃貸アパート暮らしとなり毎月家賃が発生することになります。今回の事例では、年金収入が月当たり14万円程度になってしまったにもかかわらず、そのうち約半分をアパートの賃料にあてなければなりません。

 

夫婦2人での生活から1人暮らしになり人数が半分になりますが、生活費は半分に減ることはありません。離婚による財産分与や年金分割は想像以上に経済的な影響が大きく、夫婦でゆとりあるセカンドライフから一転、毎月の暮らしに困窮する可能性があることを知っておく必要があります。

 

熟年離婚の引き金となった「がんの特殊性」

今回の事例では家族の言葉に耳を傾けず、自分の独断でさまざまながんの民間療法に散財し、最終的に家族に対し暴言を吐きそれが最終的な離婚への引き金となってしまいました。もちろん離婚に至るにはそれ以外にもそこに至るまでの積み重ねられた原因があると思いますが、がんという病気の特殊性もその原因のひとつであった可能性があります。

 

国立がん研究センターによると、男性のがん5年生存率はがん種類全体で約60%、前立腺がんに至っては90%を大きく超え100%に近い数字になっています。

 

ところが日本ではいまだにがんは不治の病で『がん=死』というイメージが根強く残っている印象があります。ですから体の中にがんがあるという事実により、精神的に不安定となり支えてくれている家族に対して不適切な対応をして家族関係を壊してしまう可能性があります。

 

今回の事例においてもがんが体内にあっても、特に症状がなく経過観察で済んでいる状態にもかかわらず、主治医を信頼できずに独自でさまざまな民間療法に散在するという行動につながってしまいましたが、そのように冷静な判断をできなくさせてしまうことががんという病気の特殊性といえるかもしれません。

「老後の備え」はお金の話だけではない

夫婦のあり方はそれぞれではありますが、一般的に60代や70代になってからの熟年離婚はその後の経済状況を不安定化させ、老後破産を招くリスクがあります。また経済面以外でも離婚により病気などなにかアクシデントが発生した場合に支えてもらうパートナーを失うことにもなります。

 

老後の備えというと老後資産(お金)を作ることばかりに意識が向く可能性がありますが、長い期間をかけて夫婦間の信頼関係を醸成していくことや老後の病気の代表であるがんの実態を若いうちから学んでおくといったことも、セカンドライフを安心して過ごしていくための準備といえるのだと思います。

 

 

谷藤 淳一

株式会社ライフヴィジョン

代表取締役/CFP

 

 

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