今回は、不動産投資における「利回り」の基本的な考え方について見ていきます。※本連載は、社団法人住宅・不動産総合研究所理事長の吉崎誠二氏の著書、『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』(芙蓉書房出版)の中から一部を抜粋し、「土地活用」に関する基本事項を解説します。

投資の判断基準となる「利回り」と「値上がり期待」

投資の判断基準と言えば、「利回り」と「値上がり期待」が基本になる。最近では、ベンチャー企業を応援するものや、環境に優しい企業に投資する商品もあり、この投資などは、「利回り・値上がり」よりも、育てたいという「志」的なモノが判断基準となる場合もある。しかし、投資一般で言えば、「値上がり期待や利回り予測に基づいて投資する」のが一般的だ。

 

「値上がり期待の利益」は、時期を見計らって買ったときよりも高く売り、その差額が確定利益となる。つまり、資産そのものの価値がどうなるか、にフォーカスするということだ。

 

一方、「利回り」は投資商品(株式・不動産など)が生み出すお金(収益)にフォーカスする。株式においては配当がこれにあたり、賃貸住宅などへの不動産投資においては、賃料(家賃)がこれにあたる。

 

利回りは、資産が生み出す年間の金額÷投資(購入)金額で計算される。

 

株式における配当利回りは一口あたりの配当金額×株数であるから、それを購入金額で割れば、配当利回りが出てくる。この原稿を執筆している2015年の秋ごろの日本企業の株式の配当は、1%台~3%台くらいが一般的だ。

 

株式投資においては、値上がり期待を目論んで投資する方も多いが、最近では上場株式と同じように売買できる投資信託であるJREITやETFが一般に広まり、こちらでは配当狙いの一般投資家も多いようだ。

賃貸経営における「表面利回り」と「実質利回り」

賃貸住宅経営の採算性を判断する指標は、不動産(賃貸住宅など)の購入に要した費用(所有している土地に賃貸住宅を建てる場合、建築に要した費用)と、そこから得られる賃料収入との関係で表され、主に次のように「表面利回り」と「実質利回り」の二つの利回り指標がある。

 

表面利回りとは、単純に賃料を投資した額で割ったもので、賃料を12倍(12カ月分)し、購入金額(投資金額)で割るという計算式で算出する。所有している土地に賃貸住宅を建築する場合(土地活用としての賃貸住宅経営)、土地価格は周辺の取引事例、あるいは公示地価をもとに想定額で建築費用に加算する。建物価格は、賃貸住宅を建てた際の費用ということになる。

 

しかしこの場合、単純に賃料を12倍(12か月)しているので、この式は一年間を通じて満室想定ということになる。年間平均約5%程度の空室が見込まれる場合は(2年ごとに1か月の空室想定がこれにあたる)、賃料×12か月の数字に95%を掛けて、それを購入金額で割るという計算が必要となる。空き室率が3%のときは、97%を掛けるという同様の計算が必要となる。年数が経てば、当然空室可能性や賃料下落可能性が高まるから、注意が必要だ。

 

次に、実質利回りだが、不動産投資ではNet Operating Incomeと表現される数字がある。これらの頭文字をとってNOIと呼ぶが、賃料収入から必要な経費を引いたもの、それがNOIだ。このNOIを投資金額(購入金額)で割ったものが実質利回りだ。一般的には、実質利回りが収益力を見定める基軸となっている。

 

★表面利回り(%)
年間の総収入÷総投資額×100


★実質利回り(%)
(年間の総収入-経費) ÷総投資額×100
(= Net Operating Income = NOI)

本連載は、2016年2月15日刊行の書籍『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

データで読み解く 賃貸住宅経営の極意

データで読み解く 賃貸住宅経営の極意

吉崎 誠二

芙蓉書房出版

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