今回は、「土地活用」の内容を決める際の規準などについて見ていきます。※本連載は、社団法人住宅・不動産総合研究所理事長の吉崎誠二氏の著書、『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』(芙蓉書房出版)の中から一部を抜粋し、「土地活用」に関する基本事項を解説します。

判断の軸となる「利回り」「資産承継」「税」

前述したように、自分でそのまま使うか使わないか。活用するならそこに建物を建てて貸すのか、そのまま更地のまま貸すのか、という選択があるが、どのような土地活用を行うかは、オーナーが所有する土地の周辺状況によって、その選択肢は限られてくる。

 

そして、いくつかの選択肢に絞られてくる。その際に、土地を所有しているオーナーは、どのような基準で、何をするかを決めればいいのかについて、今回、解説していく。

 

代表的な判断軸は三つある。

 

一つ目は、利回りの判断。

二つ目は、資産継承がしやすいかどうかという判断。

三つ目は、税の観点からの判断。

 

どれがふさわしい判断事由なのかは、各オーナーの置かれている環境によって異なる。具体的に土地活用をしようと考えた際には、ハウスメーカー等のパートナー企業とこの点を中心に打ち合わせをするとよいだろう。

 

まず利回りについてであるが、当然、利回りの中で安定を求めると利回りが低くなるというのが投資の世界でのセオリー、原理原則である。

 

そのため、「利回りが高い」イコール「安定性はやや欠ける、リスクが高い」ということになるし、逆に安定性を求めるならば利回りは低くなる。高額な住宅設備品が備わった賃貸住宅は人気が出そうで、賃料も高くとれそうだが、費用がかかる。安価な設備品で安く賃貸住宅を建てると、高利回りの可能性もあるが、10年後、20年後は厳しいかもしれない。

 

そのような表裏一体の関係にあるので、土地活用していく中で、「どれくらい安定性を求めているのか」、「その土地において投資した資金をどのようなかたちで回収したいのか」、そのような軸で決断される方は多い。それが一つ目の、利回りで選ぶということである。

 

次に「上手な資産継承ができるか」であるが、これは、簡単な言い方をすれば、継続的に収入があるかどうかということになる。

 

定期借地契約などの場合、賃料は決められた期間しか入ってこないが、たとえば賃貸住宅などであれば、30年や35年ずっと継続的に入ってくるので、こちらのほうが資産の継承はしやすくなる。

 

先ほど、農地などは継承しにくいと述べたが、もちろん、自分で使っている土地を子どもあるいは孫に継承していくことが、一番資産継承がしやすいということになる。

 

最後に、税の観点からの選択の基準であるが、賃貸住宅であれば、当然一定の条件を満たさなければならないものの、固定資産税・都市計画税・相続税・所得税などのいろいろな軽減措置がある。

 

一方、更地として使わないかたちでの農地で置いておくと、宅地に比べてさらに税が低いという点がある。税においては、住宅がらみの資産活用は優遇されているといえるだろう。税に関することはまず税理士に相談するのがのぞましい。

実現性の高い計画、リスクを読み込んだ計画を立てる

まとめると、未利用の土地を有効に活用するためには、まず地域、その周辺の状況、あるいは周辺の人口動態、企業の活動状態、地域の将来の見通しなど、あらゆる角度から判断しなければ、その土地をどう活かせるかは判断がつかない。

 

そのため、一つの側面から見て「これでいい」と判断するのではなく、あらゆる可能性を探り、そのメリット・デメリットを考慮した上で候補を絞っていく。

 

そして、先ほど述べたような利回り、資産継承のしやすさ、税の軽減がどれくらいあるかなどの観点から事業計画を描き、その計画を実行に移すことが求められる。

 

当然絵に描いた餅のような計画を作っても仕方ないので、実現性の高い計画、リスクを読み込んだ計画を立てるべきだ。

 

賃貸住宅の場合は入居者、企業向けの店舗や事務所の場合はテナントの企業の需要がどれくらいえるか、そういったことをしっかり想定しておかないと、土地活用は成功に結びつかない。ただ単に「これはメリットがあっていいな」「この辺は賃貸需要がありそうだな」「この辺は店舗の需要がありそうだな」と思うだけでなく、本当に成功させるためには、どれくらい、描いた計画を実践的に実行に移せるかどうか、空室確率や賃料下落の予測なども盛り込んで、最終的には判断したい。

本連載は、2016年2月15日刊行の書籍『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

データで読み解く 賃貸住宅経営の極意

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吉崎 誠二

芙蓉書房出版

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