年収1,000万円だったのに? 元エリート会社員、浪費グセ直らず70代で老後破綻「子どもに頼るしか…」と涙【FPが警告】

年収1,000万円だったのに? 元エリート会社員、浪費グセ直らず70代で老後破綻「子どもに頼るしか…」と涙【FPが警告】
(画像はイメージです/PIXTA)

現役時代に高額所得者だったからといって、老後生活が安泰だとは限りません。節約する習慣が身についていないこと、介護費や医療費が予想外に高いこと、そしてなにより、公的年金がそこまでたくさんはもらえないことがあります。ある元エリート会社員のケースを見ていきましょう。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

元エリート、「ゆとりある老後」の予定が、人生最後に大番狂わせ

「70歳を過ぎて老後生活がいよいよ立ち行かなくなりました。私は一体どうすればいいのでしょうか?」

 

筆者のもとに相談に来たのは、石井さん(仮名)70歳。現役時代は大手企業に勤めており、退職時の年収は1,000万円というなかなかのエリートです。

 

定年退職金はおよそ2,000万円、手元の貯蓄もおよそ2,500万円で、合計約4,500万円と、「老後2,000万円問題」を軽く超える蓄えがありました。

 

「定年退職してすぐ、500万円で車を買い替えましたが、それでも残りはおよそ4,000万円です。年金もありますし、老後資金にも不安はなく、あとはゆとりある老後生活を送るだけだと考えていました…」

自宅リフォーム、介護、子の結婚祝い…止まらない出費

石井さんにはお子さんが2人いますが、2人とも社会人になったタイミングで独立しました。現在、長男は30代前半で結婚したばかり、20代後半の長女も結婚が決まっています。

 

60歳の定年退職時は、すでに子どもたちも独立し、石井さんと専業主婦の奥さん、そして石井さんのお母さんの3人で穏やかに暮らしていたといいます。

 

しかしその3年後、石井さんのお母さんがちょっとした段差で転倒し、ひざを痛めてしました。なかなか痛みが治まらないことから、自宅に閉じこもりがちになったのですが、そのうち認知症の症状が出るようになったのです。

 

「母のことはもちろん心配でした。そうはいっても、やっと自由の身になったのです。定年後は夫婦2人でゆっくりするため、再就職はしないことにしました」

 

「別に贅沢なことはしていません。たまに温泉旅館に泊まることはありましたが…」

 

しかし、くわしく話を聞くと、ダダ漏れともいえる出費が判明しました。

 

60代前半で、築古となった自宅の屋根や外壁のリフォームのほか、お母さんのためのバリアフリー化、介護用設備など、500万円の費用を投じています。まあ、これは致し方のない範囲かもしれません。

 

しかし、自宅リフォームの直後、ご長男の結婚祝いに150万円を渡しています。リフォーム費用500万円、ご長男の結婚式で150万円と、一気に650万円もの貯金が消えました。

 

そして、奥さんの介護の負担を軽減するため、高齢となったお母さんに、認知症の方も受け入れ可能なデイケアへと通所してもらうようになりました。

 

介護費用は、食事代を含めて毎月4万円もかからなかったため、毎月6万円のお母さんの年金で収まっていましたが、デイケアに通いだしてからは、通院費や日用品などで毎月さらに6万円がかかるようになり、石井さんが毎月4万円を持ち出すことになりました。お母さんにかかる費用ですから仕方がないですが、決して安くない出費です。

コンパクトな支出へとシフトできず…70代で家計破綻の悲劇

そして、石井さんには致命的ともいえる悪いクセがありました。現役時代の年収が高かったことから、友人や後輩との食事や、親類での集まりなど、なにかあるたび「俺が払うよ」と、気前よくお金を出してしまうのです。それがどれほど家計に響いているか、確認することもありませんでした。

 

そのため、毎月30万円前後の貯蓄を取り崩してしまい、年金受給開始となる65歳までの5年間で、1,800万円も失ってしまいました。65歳になったときには、貯蓄は1,700万円まで目減りしていたのです。

 

年金を受給するようになってからは、奥さんと合わせて毎月20万円の年金を受け取っていますが、これまでの生活水準を一気に落とすことはできず、やはり毎月不足分の10万円を毎月取り崩していたといいます。

 

石井さんが67歳になったころ、夫婦2人とも病院にかかることが増えはじめました。想定外の医療費の出費です。

 

「そのころ、母がいよいよ弱ってきて、ついに老人ホームに入所することになりました。入所費用は500万円で、私が支払うことになりました。これにより、貯蓄額が1,000万円を切ってしまったのです。もちろん、節約を心がけようとしました。しかし、70歳になったとき、とうとう貯蓄額も底をついてしまって…」

 

石井さんはうっすら涙を浮かべています。

 

いくら人手不足とはいえ、10年のブランクがある病身の70歳を雇ってくれるところは見つからず、年金以外の収入はなくなってしまいました。しかし、夫婦の通院費とお母さんの介護費で毎月10万円が必要です。石井さん夫婦の年金は20万円ですから、どうにかして残り10万円でやりくりするしかありません。

 

もし車を保有しているのならすぐ手放すこと。

病院の処方薬はジェネリックを選択すること。

毎日の食材は値引き品を中心に買うこと。

自宅で野菜を育てること。

 

とにかく徹底して節約を心がけるしかありません。

 

「それでもムリだったら…?」

 

小さくつぶやく石井さんに、

 

「最悪は、お子さんに頼るしかありませんね…」

 

と答えたところ、石井さんは「どうしてこんなことに…」と、泣き崩れてしまいました。

 

ちょっとした意識の違いで、老後生活は大きく変わってくるといえます。石井さんの例からもわかるように、高い給料をもらっていた方でも、お金の使い方を間違えると、老後はあっというまに困窮してしまいます。

 

シニアになったらすぐに「お金の使い方」を切り替える必要があるのです。

 

 

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

 

★老後生活が破綻してしまう原因についてはこちらをチェック!

【退職後の老後生活】年収1,000万円のエリート会社員でも年金が少ない!老後生活が破綻した実態を暴露

 

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