(※写真はイメージです/PIXTA)

2025年には65歳以上の5.4人に1人が認知症になるともいわれている日本。高齢化が進むなか、需要が増す介護等のサービスが付いた老人ホームですが、その高額な入居金に驚愕する人も多いようで……。本記事では、A子さんの事例とともに、多くの人がいつかは直面する介護問題について、FPの笹沼和子氏が解説します。

義母を高級老人ホームに入れたいと夫が言い出し…

夫はひとりっ子ですが実家が手狭なため、A子さんとの結婚と同時に隣町にいまの自宅を建てました。5年前に義父が亡くなりましたが、個人の会社で働いていたため受給していた年金は夫婦とも国民年金で、遺族年金は支給されませんでした。

 

夫は就職後できる範囲で生活費の仕送りを続けていました。おおむね月4~5万円です。A子さんは子育てのなか、仕送りを負担に思うあまり、「いつまで息子のすねをかじり続けるの」と思いながらも「いけない」とぐっと堪え続け、夫には伝えずにいました。

 

夫が定年後、嘱託になり給料が下がっても、そして退職後、年金生活に入っても仕送りは続けています。夫の年金は月18万円(国民年金含む)と70歳までは企業年金が月5万円あります。A子さんの年金は月7万円(国民年金含む)です。現時点の預金は3,500万円です。

 

娘がそれぞれ独立してからは、何度か義母に同居も提案しましたが、慣れた家に住み続けたい、知り合いがいないところに引っ越したくないと拒絶されいまに至りました。

 

「ついに母が認知症になってしまったようだ。もう一人で生活させることは無理だろう。最後の恩返しとしてうちに引き取りたいと思うが、それは無理だろうからできるだけよい老人ホームに入れてあげたい。ちょうど帰り道にあった老人ホームがよさそうだからパンフレットをもらってきたよ」

 

気持ちはわかるけれど老人ホームっていくらかかるの……。

 

A子さんは反論したくなる気持ちをぐっとこらえ、渡された介護付き有料老人ホームのパンフレットを見て愕然としました。

 

そこにはひとつのケースとして『入居一時金800万円、入居後にかかる月額使用料20万円、別途、介護サービス費用やおむつ代等の諸費用がかかる』と記載されていました。

 

お義母さんの年金や仕送りではとても足りない。私たちの老後はどうなるの……

 

一瞬、A子さんの脳裏に『離婚』の文字が浮かびました。そんな風に考えてはいけないと思いつつもどうしても浮かび上がってくるのです。

 

「もし本当に老人ホームに入れるなら、夫とは離婚するしかない……」一人で悶々と悩んでいるとついついそんな風に思ってしまいます。

 

その後、病院に義母入院期間を確認したところ、右半身に軽度の麻痺があり、リハビリテーションが必要なため1~2ヵ月程度になる可能性があるが、現状ではなんとも言えないとのことでした。とりあえずの猶予期間ができたため、A子さんは年金受給時に夫婦で相談したFPに相相談することにしました。しぶしぶですが夫も同席に同意しました。

相談して見えてきたこと

FPに説明を受けるうちに、夫もだんだん落ち着いてきました。わかってきたことは、認知症になったからといって慌てて生活を変えないほうがよい場合もあるということです。

 

厚生労働省の2022年簡易生命表によると、日本の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳ですが、90歳の平均余命は男性が94.49歳、女性が95.85歳とされています。夫は「おふくろは心臓が丈夫だから100歳まで生きるかもしれない」とつぶやきました。

 

また、高齢化の進展とともに、認知症患者数も増加しています。「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」では、65歳以上の認知症患者数は2020年に約602万人。2025年には約675万人と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。「私たちにとっても他人事ではないのね」A子さんも認知症が身近に感じてきました。

 

認知症と診断を受けたからと言って、すぐに老人ホームに入居しなくてもよいケースもあることがわかりました。老人ホームの種類や費用もさまざまなタイプがあることも説明を受けます。まずは義母の症状と、本人の意思を尊重することも大切とのことで、認知症との診断で慌ててしまった夫は反省したようでした。お金の不安から離婚の文字が頭をよぎったA子さんも心の中で夫と義母に申し訳ないと謝りました。

 

FPから介護について悩んだときの相談先として、『地域包括相談センター』を紹介されました。

 

地域包括相談センターとは、住み慣れた地域で暮らすことができるよう、保険医療や介護に関する相談を行うほか、相談内容に応じて、認知症に詳しい認知症疾患医療センターや、認知症初期支援リームなどの関係機関とも連携しながら、適切な保険福祉サービスまたは制度の利用につながるようさまざまな支援を行っており、すべての市町村に設置されています。市町村高齢者福祉担当者が問い合わせ先です(厚生労働省HPより抜粋)。

 

A子さんも夫とともに相談を受けることにしました。また、友人や近所の人にも介護施設についての情報交換や、いまのうちに自分たちがどうしたいのか、2人の娘を交えて話し合うことにしました。今回の義母の入院はA子さん夫婦にとって、いつかは直面する問題を考えるよいきっかけになったようです。

 

 

笹沼 和子

FP相談ねっと

 

 

 

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